裄は短しタスキは長し

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2020/02/16 12:49「プラスマイナスゼロ」若竹七海

 小説がドラマ化される時、原作とテイストがかけ離れることを許容できる読者と、そうでない読者がいる。 

私は基本的に後者だが、毎週金曜日午後10放送の「ハムラアキラ 世界で最も不運な探偵」は例外的に面白い。というわけで、これからしばらく、今まで読んだことのある若竹七海作品の紹介と感想を語ることにした。 

 

現在若竹七海さん、といえばもちろん葉村晶だが、葉崎市にまつわるコージーミステリーも外せない。 

「プラスマイナスゼロ」は、その葉崎市が舞台の学園コージーミステリーである。今までは葉崎市の海沿いで物語が展開していたが、今回は山もある。お嬢様のテンコ、ヤンキーのユーリ、成績、運動能力、身長体重、3サイズ゙、靴のサイズ゙までが全国平均というミサキ。荒唐無稽な設定のプラスマイナスゼロ・トリオが遭遇する謎をめぐる物語である。 

普通コージーミステリーは、警視庁捜査一課が出てくるようなハードで殺伐とした場面がない傾向があるが、若竹さんの場合、行間に仕込まれたアクセント、というか一種の毒が胸の奥にしん、と響く、読後に「これってコージーだよね?」と自分で再確認したくなるものが多い。 

1篇はテンコに付きまとう「毎日1時間聞き役をやるのすら苦痛な愚痴っぽい幽霊」にまつわるお話。第2編は浜辺でクリームソーダを味わいながら、青髭のごとき妻殺しの容疑者のアリバイトリックを推理していたらとんでもない結末を迎える。第3篇は一見ささやかそうに見える犯人の悪意が、実は以外に怖かったりする一作。第4篇は、保険金詐欺の常習犯を相手に3人が意外な?大活躍をする。第5編も犯人が企てた復讐の回りくどさ、いやらしさがこの上ない。 

最終篇は典型的な小市民的意地悪を無上の楽しみとしている生徒会にまつわる三人が仲良くなった馴れ初め。ミサキ自身が自分の友達づきあいについて思いを巡らすシーンは皆ドキリとさせられるに違いない。 

凶悪犯罪ではなくとも、犯人の心の中に、そして誰の心の中にでもある負の要素を描き出す技量は、さすが若竹さんである。

 

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