裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2020/04/11 22:43「日の名残り」The Remains of the Day 1993年

 少し前からカテゴリのタイトル「いくつになってもテレビっ子」が、今一つしっくりこないと感じていた。

ドラマの感想は回数がすすんで中盤になってから紹介しても、ストーリーが追えずに楽しめないかもしれない。ひどい時は最終話を見終わってから感想を書きたくなる。オンエアに間に合っていないが、どうしても伝えたい、と思ってしまう。

 地上波、BSとも昔ながらの再放送は今も健在だし、最近はネットでの見逃し配信も充実している。取り上げるドラマの進行の程度を、以前ほど気にする必要はないのかもしれない。ならばカテゴリーをえいっと改称してしまえ。

 ということで、名称を「いつか再放送であいましょう」にしました。ドラマだけでなく、映画も対象です。DVDレンタルなどの参考にして頂ければ嬉しいです。

 

 というわけで、改称第一弾は映画「日の名残り(原題The Remains of the Day」。原作カズオ・イシグロ。監督ジェイムズ・アイヴォリー。主演アンソニー・ホプキンス。1993年公開。

 監督がアイヴォリーだったかー。どうりでイギリスの上流階級、支配階級のお屋敷と暮らしぶりの映像がリアルだよなーと納得していたが、検索して確認したらアイヴォリー本人はイギリス人ではなく、アメリカ人と知って大変驚いた。

 カズオ・イシグロの原作は、日本人と日本人以外の人、とりわけヨーロッパ圏の人で、感想がはっきり分かれる、という特徴があるらしい。映画版も原作の空気感を忠実に再現しているので、やはり同じ印象だと思う。

 具体的に説明すると、私は日本人なので、これはイギリスの貴族のお屋敷に仕えた執事が一人称で語る物語で、主のゲストのもてなしや、日々の暮らしぶり、仕事ぶりを見て、当然イギリス的だと受け止めるが、日本人以外の人は、父の臨終よりもゲストのもてなしが第一の執事、スティーブンスの厳格でストイックなプロ意識に日本の侍のような印象を受けるのだという。

 

 イギリスの御領主さまのお屋敷は邸宅そのものも、調度品も、そして当然、広大な庭も美しい。

 いただけないのは、ダーリントン卿の人となりで、崇高すぎる理念と中途半端な善良さしか待ち合わせていない彼は、ドイツ人の親友と敵味方に分かれて戦うことになったために、厳格な平和主義者となったのはいいが、戦死した親友への哀惜から親ドイツの態度を隠そうともしないし、ユダヤ人の娘を雇い入れてリベラルなところを見せようとしたのもつかの間、自分のゲストに不愉快な思いをさせるわけにはいかないのだと彼女たちを解雇し、解雇したらしたで、今度は良心が痛み出し、もう一度雇ってもいい、とスティーブンスに行方を探させる。そのキャラクターが、冷酷なまでに職務に忠実で、ストイックな執事スティーブンスのそれと対照的、というのが面白い。

 もう一つ面白いのは、件のお屋敷は間違いなくイギリスの貴族の館なのだが、まるで日本の忍者屋敷の隠し扉のように、使用人たちが行き来するための裏階段に通じるドアが、だまし絵のようになっている。

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