裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2020/11/21 06:23「ホワイトラビット」伊坂幸太郎

 「湖の男」と「厳寒の街」の暴力シーンが予想外に少なかったのに対し、伊坂幸太郎「ホワイトラビット」はいつも通りに暴力シーンがてんこ盛りだった。量もさることながら、「暴行を加える側の人間が病的かつ盲目的に暴行が好き」という「伊坂作品あるある」のキャラクターが容赦なく、受ける側にとっては理不尽以外の何物でもない暴行を淡々と加えるのだから、怖いことこの上ない。

 

 仙台市の住宅街で、立てこもり事件が起きた。犯人の要求は「折尾、通称オリオオリオというオリオン座の蘊蓄を語らせたら止まらない男を連れてこい」というもので、犯人と交渉するSITは早速その男を連れて来る。ところがこの折尾という男、事の重大さが全く分かっていないのか、作戦行動に一々非協力的な上に、何かとオリオン座を引き合いに出し、変な持論を展開してSITの隊員たちを翻弄する。

 

 実はこの兎田という立てこもり犯も、自ら望んで立てこもるに至ったわけではない。彼が属する誘拐ビジネスという裏社会の組織の金を横取りしたのが先述の折尾というコンサルタントで、「お前の妻の身柄はこちらが預かった。妻を返してほしかったら折尾を捕まえてこい」と命じられ、折尾の行方を追っている過程で、ある民家に押し入り、行きがかりで立てこもり事件の実行犯になってしまったのである。

 

 SITの説得は長時間に及んだ。「もうやめたい」「疲れた」と悲観的な言葉を漏らしたのち、犯人は立てこもっている家のベランダから投身自殺をはかってしまう。

 

 で、事件の全容が分かったところで、この話は終わるかに見えたが、実は事件の真相は全く予想外のところにあったことが、物語の後半で明らかになる。で、そこから事件の真相がもう一度時系列で語られて行くのだが、これがまあ目からうろこと言うか、「え、そういう事だったの?」という驚きの展開が待っている。

 

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