裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2020/12/11 20:17「クジラアタマの王様」伊坂幸太郎

 伊坂幸太郎さんは、千里眼か名品の水晶玉でもお持ちなのだろうか。 

実際に伊坂幸太郎著「クジラアタマの王様」を読めば、私が言いたいことがお分かりいただけるはずだ。 

 お菓子メーカー勤務の男と、代議士と、アイドルグループのメンバーの青年。実生活で何の接点もなさそうな3人は、過去のある事件と偶然がきっかけで巡り合うことになった。各々の自覚症状(?)に差はあるものの、実は彼らは夢の中で、ファミコンやオンラインのRPGのキャラクターのように、助け合って怪物と戦っているのだ、という。 

 やがて彼らの夢の中での戦況は、どうやら目覚めている間の彼らの実生活にも影響を及ぼしていることが明らかになり、時には密に、時に疎遠でありながらも影ながら、彼らは仲間の誰かが危機に陥ると一致団結して敵に立ち向かう。 

 夢の世界での彼らの敵が、巨大な熊とか寅とかそのキメラみたいな怪物である一方、彼らの実生活でのそれは、お菓子メーカーが受けるクレーム攻撃やSNS上での炎上とか、サーカスから逃げ出した猛獣とか、新型ウイルスのパンデミックだ。 

 特に最後のパンデミックに至っては、新型コロナの第3波に見舞われているさなかで読んでいるから、その臨場感に圧倒される。本作の刊行は20197月。執筆は実際のコロナ禍より前で、伊坂さんはその世界を完全に創作として書いているはず。にもかかわらず、そこに生じる群集心理と言うか、集団ヒステリーみたいな現象の描写の一つ一つが正確、的確なことに驚いた。

 

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