裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2018-01-23 21:36:36.0「紙の動物園」ケン・リュウ

 図書館の書架というのは、大抵本のサイズで収蔵場所が決まってくる。 

 年末年始に読む本を物色して新書のコーナーへ足を向け、ハヤカワのポケミスのコーナーを眺めていると、ケン・リュウ「紙の動物園」が目に留まった。 

 ケン・リュウ?「紙の動物園」?なぜか既視感がある。こういう作品は絶対にスルーしてはいけない。結果は大当たりだった。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞の3冠に輝いた表題作をはじめ、秀作ぞろいの短編集。確かにSFに分類するのは間違いではない。でもSF以外に分類しても問題ないかもしれない。科学技術はあくまで要素の一つで、アドベンチャーも少年の成長物語もなく、テーマはむしろ大河小説的。だから「なにこれ?イーユン・リーがお遊びでSF書いたとか?まさかね」というのが第1篇「紙の動物園」の感想。 

著者ケン・リュウ氏は中国生まれで、11歳の時アメリカに移住なさったとのこと。カズオ・イシグロ氏(日本生まれ。5歳で渡英)や、東山彰良氏(台湾生まれ。5歳で来日)と比べて、かなり成長してから渡米したせいか、作品のアジア色が3人の中で一番強い、おそらく現在日本の書店に並んでいて、日本語で読めるSFのどれよりもアジア的なのではないか。でも、「異国趣味」で全世界的に注目を浴びた、とは思えないテーマの普遍性にうーむ、とうなってしまった。 

一番印象に残ったのは、訳者も注目するきっかけとなった「結縄」。次が「円弧(アーク)」、同点で表題作「紙の動物園」。経験上、バイオサイエンス系の作品は特に印象的だった。 

 

追記:ケン・リュウ氏は昨年5月第二短編集「母の記憶に」の翻訳刊行に合わせて来日していた。私は何の思い入れもなく当時の記事をスクラップして保管しており、ゆえに本のタイトルとお名前に既視感があったことが判明した。 

 BSで「週刊ブックレビュー」を見ていた頃は良かった。昨今は日ごろから新聞の書評欄と出版社の広告欄に、入念に目を通すなど努力が欠かせない。

 

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