裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2018-01-28 22:51:00.0「カールの降誕祭」F.V.シーラッハ

  見た目の薄さとタイトルの降誕祭という単語から「シーラッハはハートフルもいけるのか?」と思った私は大バカだ。よく見たら、「犯罪」や「罪悪」と同じく絵はタダジュン。ハートフルなわけがない。

 

 シーラッハの小説はもちろん面白いが、訳者酒寄進一による巻末のあとがきも面白い。今回は「カールの降誕祭」の解説の部分での、あるインタビューでのシーラッハの発言が印象的だった。高名な刑事事件弁護士であるシーラッハ曰く、ドイツではクリスマスに殺人事件が頻発するそうで、理由は「会いたくない家族に会うせい」だという。日本でも、お盆だ墓参りだ年越しだと帰省を負担に思う人は少なくないだろうが、犯罪統計に影響を及ぼしているんだろうか。警察関係者に聞いてみたいものである。

 

 このエピソードを読んで思い出したのが、40年近く前、中学時代に吹奏楽部で見たファゴットの練習教本にあった写真だ。著者がドイツに留学していた時、クリスマスに誰かのお宅に招待されたときの写真。注釈には「ドイツではクリスマスを一人で過ごすのは不吉なこととされ、家族もしくは親しい人と共に祝うのが望ましいとされている」とあったが、そう単純な話ではないらしい。

 

どれも100頁に満たないが、とにかく内容の濃い短編が3篇。決して心はほっこり温まらない。それでもシーラッハに、この素敵な贈り物のお礼を言いたくなるである。誰かに贈るのはリスクが大きいが、日々頑張っている自分へのご褒美なら、絶対お勧めの一冊である。

 

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