裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2017-03-03 23:38:24.0 アルタ・ライトを鼻で笑えるようになる塩野ワールドの凄さ

 「ローマ人の物語Ⅷ・危機と克服」はガルバ、オトー、ヴィテリウスの目まぐるしい交代劇と内乱の時期をやっと抜け出し、ようやくヴェスパシアヌス帝の即位までたどり着いた。

 内乱というのは本当に陰惨で、終息に導くのが難しい。資料としてタキトゥスの著作を読む塩野さんが「彼の筆がノッてない」と嘆くのと同様、私も塩野さんの著作を読みながら、何とも言えない閉塞感と疲労感に襲われた。ファンならばもっとスラスラ読み進まねばならないのだろうが、時代が時代ゆえ、ユリウス・カエサルの時代や五賢帝の時代のようなわけにはいかない。身も蓋もない言い方だが、読んでいると時折「これならネロの方がまだマシ」と思うことすらあった。

 一方、本の中の古代からニュース映像という現在に戻ってくると、アメリカ発のそれは、さながら映像化された小説の様相を呈している。

 先日は、アルタ・ライトという過激な白人至上主義者のスペンサーという男のインタビューを見た。「白人は世界で一番優秀な人種だから、マイノリティを排除するのは当然の権利だ。遠慮することはない。このご時世、差別され虐げられているのは白人のほうだ」というのが彼の主張のあらましだが、この危険な人種差別主義者は、トランプ政権発足以降、時代の寵児となりつつあるとのこと。

 普通だったら恐怖と怒りを感じるところだが、毎日少しずつ「ローマ人の物語」を読んでいると、テレビの前で映像のスペンサーくんに容易く突っ込みとダメ出しできるようになり、しまいには鼻で笑い飛ばせるようになる。

 だから塩野作品は止められないのだ。

 

2017-02-25 19:08:25.0 古代の三面記事に惑わされてはいけない

   塩野七生「ローマ人の物語Ⅶ・悪名高き皇帝たち」の後半の主役は、皇帝クラウディウスと皇帝ネロ。 

 この二人に言及するとき、必ず登場するのが、クラウディウス帝の最初の皇后メッサリーナと、次の皇后にして皇帝暗殺の首謀者にしてネロ帝の母アグリッピーナ。二人の皇帝は悪女の代名詞のような女性たちに翻弄される、情けなく、そして残虐な皇帝、という役どころが定番である。 

 塩野作品の醍醐味は、既存の歴史観-具体的にはタキトゥスやスヴェトニウスの個人の嗜好が協力に支配する歴史観やゴシップ偏重のエピソード選択-を徹底的に検証し、新しいローマ史観を構築して見せてくれるところだ。だから二人の皇帝が愚帝と暴君という月並みな人物評で切り捨てるのではなく、「彼らだって結構頑張っていたんだ」とか「そうおバカでもなかったんだ」という新しい歴史観を見せてもらえると思うとワクワクする。 

 また、「悪名高き皇帝」の失策の連続にも関わらず、ローマ帝国は壊滅的な打撃を受けることなく意外に盤石だったのはなぜなのか…そういうディテールを丹念に読ませてくれる。 

 

 だから、こういう著作を一通り読んだ後、永井路子さんの「歴史を騒がせた女たち・世界編」なんか読んじゃうと、うぇぇぇ、ってことになるのです。

 

2017-02-12 15:59:53.0 2月10日 CT撮影と診察

  (今回貰った診察予約券と診察前検査の予約券。次回は採決・乳腺エコー・診察の予定)   

 

 6か月ぶりのCT撮影と3か月ぶりの外科受診は、予約時間の1000CTが診察前検査なので実際は930)よりも早く到着したにも関わらず、CT、診察、次回予約がサクサクと進行し、本来の予約時間である1000には会計までたどり着いてしまった。ここセンター病院は、総合病院によくありがちの「3時間待ちの3分診療」とは-少なくとも私がお世話になる金曜日は-無縁である。 

 検査結果は、「今のところ順調」とのこと。ただ医師が画像の説明中に「ここ(肝臓)に暗い部分があるけど前回から大きさが変わっていないから問題ないでしょう。」とおっしゃるので一瞬ぎょっとなった。前回もあった暗い部分?初耳だ。思わず「その暗い部分、というのは何なんですか?」と尋ねると「ここだけ部分的に脂肪肝になっているんじゃないかと思う」とのこと。 

 脂肪肝?あれは肥満体で大酒飲みのおっさんがなるもんだろう?確かに私の外見は小太りの中年女そのものだが、肥満体にはほど遠い(と自負している)。下戸でもある。その私が?転移でなくて幸いだが、これはこれでショックである。そろそろ肥満体で大酒飲みのおっさんに対する偏見を改め、検診で指摘されている高脂血症の放置をやめて、治療をすべき時だろうか?

 

 早々と予約・会計のカウンターに到着したが、珍しくここで手違いが発生。外来で設定した次回の予約日(診察前エコーを含む)は「担当医が不在ゆえ、外来に戻って予約の変更をしてきてほしい」とのこと。元々次回の予約日を決めるとき「検査のスケジュールが混んでいる」ことを理由に若干日にちを調整したのだが、それがまずかったらしい。再び外科外来へ戻ってその旨を説明し、看護師さんがあちこち連絡を取りなおした後、やや強引に予約日を決めた。 

 さらに会計の段階で「保険証見せないとですよね」と保険証を取り出そうとしたところ「いえ、先ほど確認しましたので」と言われ「あ、いいんですか?」と返したら、窓口の方は慌てて書類を確認し、やはり未確認だったことが判明した。あちらにお世話になってから約10か月になるが、こんなことは初めてだ。珍しいこともあるもんだ、と思いつつ、診療費8870円を支払い、病院を後にした。

 

2017-02-01 23:21:57.0 とりあえず半分まで読みました

 読み直し第2弾、塩野七生「ローマ人の物語Ⅶ・悪名高き皇帝たち」は、ページ数500・厚さ4㎝という中身も外見も重厚な1冊なので、ひとまず前半のティベリウスとカリグラまで読んだところで、ブログを更新することにした。 

 「誰にどれほど嫌われようと、帝国の繁栄のためにやるべきことをやった」ティベリウスの卓越した政治手腕と、「彼を反面教師に人気取り政策に徹底した」今はやりのポピュリズムの権化カリグラ。物語の前半は彼らを軸に進んでいくのだが、リーダーシップ論が声高に叫ばれていた刊行当時と、ポピュリズムの台頭著しい今で、受ける印象が随分変わったな、というのが我ながら驚きだった。 

 今回重点的に読み込んでいるのが、帝国の指導者階級であり、エリート集団であるはずの質の落ちた元老院議員たち。ポピュリズムは本物のピープルがら生じるわけではなく、俗物化した支配者階級や中産階級の面々から生じるものらしい。どうりでポピュリズムという言葉が「嘆かわしい」という心境とセットになるわけだ、と納得した。

 

2017-01-25 22:18:12.0 キムサブが教えてくれた米大統領の致命的誤り

 毎週火・水曜日にネットでの視聴を心待ちにしていた韓国SBSドラマ「浪漫ドクター・キムサブ」が先日終了した。すでにKNTVでの放映が決定しているので、あらすじには触れないが、ドラマを見終わって今までに見たメディカルもののドラマと決定的に違う点に気づいた。

 主人公はじめキャストのほとんどは、外科医なのに「切る」ことに重きを置いていないのだ。ほとんどが緊急搬送されてきた患者だから、切る切らないはもちろん、切れるか切れないか、切るべきか切るべきではないか、も殆ど議論しない。その代り、彼らは縫合にはとことんこだわる。ER、手術場での縫合シーンでのほかに、縫合の練習シーンもドラマの重要な見どころとなっている。

 

 放映が終わってしばらくの間、ニュースでドナルド・トランプ氏が「今は融和の時だ」と叫ぶのを見ながら「コイツこそ縫合の練習が必要だな」と思った。選挙戦で分断された国民感情が、「今は融和の時だ」の一声で融和するなら誰も苦労はしない。そもそも後で縫合することを想定しないで切り刻んだから、切る方もド下手ともいえるだろう。

 「アメリカを再び偉大な国にする」と叫ぶ彼を見ながら、白衣姿の縫合がド下手なヤブ医者、ERで患者の傷口に向かって「くっつけ!なぜくっつかん!」とわめいているDr.トランプを妄想することは、結構楽しい憂さ晴らしになった。