裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2012-12-23 23:15:27.0 iPS細胞がライムにもたらすもの

北海道が大停電に襲われていた頃、J・ディーヴァーの「バーニング・ワイヤー」を読んでいた。NYの送電網を標的にしたテロが次々と起こる中、メキシコでは宿敵ウォッチ・メイカーの逮捕劇が大詰めを迎えるが、作戦は予想外の結果が待っていて・・・と、ディーヴァーの真骨頂である3回ぐらい用意されているどんでん返しに夢中になってしまった。
 ご存じ無い方のために解説すると、主人公リンカーン・ライムは元NY市警のCSIのトップだったが現場検証中に事故に遭い、脊髄を損傷し首から下と左手の薬指以外の自由を失った。シリーズ第1作「ボーン・コレクター」でアメリア・サックスという相棒を得て今はNY市警の鑑識課の顧問として活躍している。ファンが彼のことを「究極のアームチェア・ディテクティヴ(安楽椅子探偵)」と呼ぶゆえんである。
ライムのこの特殊な事情ゆえに、捜査の実務を担当する面々が文字通りのドリームチームでこちらも素晴らしい。「バーニング・ワイヤー」では最近活躍の場が少なかったフレッド・デルレイがシブく光る活躍を見せるのが大満足だった理由の一つ。ただしもう一人のお気に入り、ローランド・ベル刑事が最後に顔見せ程度だったのはささやかながら不満が残った。彼が2丁拳銃で大活躍するシーンがあったら言うこと無しなのだが、欲張りすぎは下品だ。それは今後に期待したい。
リンカーン・ライムに限らずディーヴァーの作品を読む醍醐味は、悪と向き合う楽しさにある。ストーリーが進むにつれ犯人もしくは関係者全員の悪意、心の闇の部分が明らかにされていく過程は圧巻である。それを長編だけでなく短編でもやってしまうのだからこれはすごい。たとえ短編1篇でも最後に必ずどんでん返しが用意されている。「クリスマス・プレゼント」のような短編集を1冊読むと、逆転劇を10回ぐらい見せられるので、長編よりぐったりする方もいるかもしれない。
追撃の森」(こちらは文庫版)のようにストーリーが追走劇で、追う側と追われる側の視点が交互に入れ替わる時など、追う側の活躍だけでなく追われる側のキャラクターに魅せられてしまう。犯行の手口以外の部分で、犯人が持つ強いこだわりについて語られることが多いのもディーヴァー作品の特徴である。
 最後に「バーニング・ワイヤー」のラストについて。
「時代は変わる。人間も変わらなくてはならない。どんなリスクがあろうとも。何かをあきらめなくてはならないにしても」
「親しくしていたある人物」の、この言葉に触発されて、ライムはラストで重大な決断を下し、実行に移す。現実世界では、山中教授がノーベル医学・生理学賞を受賞したことでもあるし、ぜひライムにiPS細胞による再生医療技術の恩恵がもたらされるといいな、と心から願っている。

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2012-12-23 23:09:27.0 正月は背筋伸ばして葉室麟

「ゆるぎなき凛とした作品で注目を集めている」
今年直木賞を受賞した「蜩ノ記」の奥付には、葉室麟の作品をこう評している。とはいえ一歩間違えば浅薄な綺麗ごとのレベルに落ちてしまう危険があるため、このように評される作品を世に送り出すのは実は意外に難しい。いわばそのバランス感覚こそが時代小説家の持ち味であり、葉室さんの場合その集大成の一つが直木賞受賞作の「蜩ノ記」だろう。
葉室作品はまずタイトルと装丁がよろしい。書架の前に立ち外観を眺めるだけでも十分楽しいが、もちろん読むことをお勧めする。ぶれない生き方を文学に学ぶなら葉室作品はイチオシである。
先月図書館で見かけて読んだ「蜩ノ記」に続き、先日「橘花抄」を借りた。私の所要時間はどちらもノンストップで5時間強。時代小説の初心者でも読み易いと思う。正月に初詣以外にも少しは厳粛なことをしたい、すがすがしい気持ちで一年を始めたい、とお考えの方には是非おすすめしたい。
筑前黒田藩士の娘、卯乃は父が切腹したのち身内の誰もが引き取りを拒んだため、隠居した前藩主の重臣、立花重根のもとに身を寄せる。数年後、重根は卯乃を後添えにと申し出るが、間もなく卯乃は失明してしまう。重根の義母りくや周囲の人々の温かい思いやりに導かれて卯乃は美しく優しい、そして強い女人に成長していくというのがストーリーの主軸だが、背景には藩主黒田家の父と子、兄と弟の二重の確執、藩内における派閥争いと、立花家の同じ女性を思いながらも確執とは全く無縁の重根、峯均兄弟の兄弟愛、やや複雑ではあるものの、怨恨とは程遠い峯均と別れた元妻、継母と継子でありながらこちらも確執とは無縁のりくと重根、とすべてが対比して描かれている。
卯乃と立花家の人々は次々と悲運に襲われ、結果としてその権勢を失うが、困難のさなかにあっても自分を見失わない、ぶれない生き方を貫き通す。これはこれでハッピーエンドだな、と思わされてしまうところが不思議である。
ただし見習うのはかなりしんどい。葉室流「ゆるぎない凛とした生き方」の探求は三が日まで。それが過ぎたらほどほどにするのが今を生き抜く知恵である。

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2012-12-17 15:10:40.0 選挙の思い出

 自民・公明の圧勝で選挙が終わった。今回は早い時期に候補者も支持政党も決めてしまっていたから期日前投票をした。有権者となってから二度目の期日前投票である。思い返せば選挙権を得て初めての投票も期日前だった。当時は「不在者投票」といって、手順がもっと煩雑だった。これこそ国家権力の横暴だ、と思ったくらいひどかった。
 20代の頃、私の職場は地元ではなかったが、住民票は移してなかったため、国政、地方を問わず棄権した投票は少なくない。たまたま選挙期間中に帰省していた時、せっかくだからと市役所に不在者投票に出向いた。「はじめての投票だぁ」と結構ワクワクしていたのだが、選挙管理事務所の対応には、冷水をぶっかけられた気分になったものである。
 まず、現在は宣誓書を一筆書くだけのところが、当時は選管の方と対面での手続きだった。こっちは有権者の権利の行使と国民の義務を全うせねば、と思っているところへ、「なぜ貴方は人として当たり前のフツーの投票ができないのか」と激しくとがめられているようで、とても不愉快だった。
次に理由を詳しく尋ねられる。仮に理由を偽ったとしても証明のしようがないのだから、しらばっくれていればいいのだが、係の方の態度は、理由としては入院や分娩は認めるが、「泊まりがけで温泉に行く」などは拒絶されそうな雰囲気があった(事実、不適切事例にみなされていたと思う)。1対1の聞き取り形式なのでほとんど取り調べのノリである。私の場合、事情を懸命に説明したが、「居住実態と一致しない住民登録はけしからん」みたいな態度を露骨に示されて、これまた不愉快だった。結局係の方は散々悩んだ挙句、理由を「長期出張」にしていた。
 そしてこれが決定的に違うところだが、投票用紙は投票箱に入れない。投票用紙と専用の封筒を渡され、記入した投票用紙を入れて封印し、係の方に渡す。受け取った係の方はそれを一回り大きな専用封筒に入れ封印して預かるのである。それを眺めながら私は、「印紙があれば現金書留と一緒だな」と少し驚いた。(印紙を貼る現金書留封筒を覚えているあたり、すでに自分が希少種であることを証明しているようなものだ)
何はともあれ当選者のみなさんおめでとうございます。でもここからが勝負だから、いつまでも浮かれていると足元すくわれるから気をつけてね。

2012-12-15 15:50:48.0 Piacere(ブログデビューのご挨拶)

はじめまして、椎 庄子(つい しょうこ)と申します。名前のとおり、追従には極めて弱い性分です。
先日まで携帯の某SNSで日記を書いていたのですが、SNSの主流がゲームに移行するにつれお友達希望者が悪質化し、SNSそのものの質が低下したため、JCVの光トリプルの契約を機にJ-CANでブログを立ち上げることにしました。話題の選択やら構成など、ほとんど支離滅裂に違いないでしょうが、どうかよろしくお願いします。
ちなみに冒頭のPiacereはイタリア語で「はじめまして、どうぞよろしく」という意味です。