裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2020/03/17 21:51 「去就」今野敏

 

 2016年刊行・・・思いのほかブランクが長かった。竜崎署長、ご無沙汰しております。 

 エンタテインメント性が高くて、しかもロジックがしっかりしているもの、そういう読みやすい作品を読みたい、そう思ったら今野敏「去就・隠蔽捜査6」しかないと思った。 

 今回の主軸はストーカー行為に端を発する誘拐・立てこもり事件だが、刑事課の戸高が「なんか違和感が」と言い出したところで、長年のファンなら誰もが思うように、私も「果断・隠蔽捜査2」がふと頭に浮かんだ。 

 そうしたら、案の定「確認が取れていない」と一人が声を上げたとたん、事件の全容が全く違った景色となって目の前に広がる。おぉ、やっぱりそうか! 

 

 シリーズもここまでくると、レギュラー陣も当初から役回りが微妙に変わっているのが「隠蔽捜査」シリーズの面白いところで、なかでも豹変ぶりが顕著なのが、第二方面本部の野間崎管理官だ。 

 監察官に竜崎のことをチクった小者ぶりとはうって変わって、かつての自分よりさらに俗物ぶりを発揮する弓削方面本部長をぴったりとマークする腰巾着ぶりを見せながらも、「いちいち本部長の判断を仰がなくても、君なら様々な措置を執れるだろう」と竜崎にけしかけられる(?)と、「やってみましょう、お任せください」と俄然やる気を見せる。すごい、あの野間崎が、やるときはやる男になろうとは。 

 本作で以前の野間崎のポジションを堅守(?)している弓削方面本部長だが、これがまたかつての野間崎のように特別監察で竜崎いじめを画策するのだが、見事失敗に終わる。あぁ、気持ちがいい。 

 竜崎家の主導権が、冴子夫人優位になっているところも小さくだが明らかな変化だ。 

 監察と異動の可能性があることを夫に告げられた冴子夫人は、まず「そんなことを考えてる暇があったら、もっと国のことを考えなさい」と一刀両断にしたのち、「でも、その弓削っていう方面本部長には腹が立つわね」とバッサリやる。それに竜崎が「いや、小者には腹も立たない」と応じる。 

 はみ出し者がルールは二の次に痛快にやってくれる、そういう爽快感はよくあるが、警察官僚が原理原則で規則を遵守しているのに、爽快感が残る。この珍しい感覚がたまらなく楽しい。 

 ところでタイトルの「去就」だが、竜崎が大森署を去る日が近いのか?と思っていたが、今回も栄転は見送られた。まずは一安心、である。