裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2020/06/13 21:08 アシガール 第10話 前編

「わしを守らんとする、たわけたおなごでござる」

 阿湖姫が城へ戻ってきた。「城下で曲者に襲われ唯之助と身を隠していたが、私を逃がすために、唯之助は私と着物を取り換えておとりになった。そのまま行方が分からない。」泣きながら謝る阿湖姫だが、血相を変えて城下へ赴く忠清の姿に驚く。

 目覚めた唯は、立派な座敷に閉じ込められていた。障子に穴を開けて外の様子を窺うと、向こう側に若い男が立っている。

「座敷わらし?」

 朝方、城へ戻った忠清を阿湖姫が待っていた。唯の身を案ずる阿湖姫に「高山の仕業なら、阿湖姫と思い込んでいる間は、唯之助は無事のはず」と答える忠清。阿湖姫は忠清が既に、唯之助が女だと気付いていたことを知る。「名を唯と申す。足軽のなりで戦場でわしを守らんとする、たわけたおなごでござる。」なぜ、阿湖姫の正体が見破られていたのかを訝る忠清に、阿湖姫は、身を隠している時に聞いた曲者の会話に、成之の名が挙がっていたことを思い出したと話す。

 

「飼いならしてきた~」

 侍女たちの厳重監視下で朝餉を頂く唯は、「阿湖姫と間違われている、人違いとわかったら」と悩む。一方、障子の向こうにいた昨夜の若者とは言葉を交わすことができた。実はこの「くま」こと宗熊こそ、高山の嫡男だった。人違いとは知らず、すっかり唯が気に入って浮かれる息子を、父高山宗鶴は厳しく叱責する。

 

「卑怯なものを人は決して仰ぎはせぬ。」

唯の居所を聞き出すため、久の住まいを尋ねる忠清。家督だけではなく何事にも執着しない忠清に、積年の憎しみをぶつける成之。忠清は「哀れな方だ。自分への憎しみなら、自分へ向ければいいものを、阿湖姫や唯を苦しめるしか術を知らないとは。」兄上は人の上には立てぬ、と言う忠清に成之は逆上し、遂に二人は刃を交える。成之から、唯が高山の本城、長沢城にいるはずだと聞かされた忠清だが、黒羽城からの知らせで松丸家から阿湖姫の兄、義次が来たとの知らせを受け、城へ戻ることに。忠清は久を城へお連れする、と告げる。成之を助け、かばうために手向かいした久に短剣を返しながら「私には命を賭けてくれる母はいなかった」と忠清。

 今、身柄を押えている阿湖姫を、息子の嫁に。高山宗鶴は、何としても羽木家と松丸家が手を組むことを阻止し、松丸を味方につけようとしていた。

 忠清の指示で、病がちの久は天野家で預かることに。信茂は信近に、吉乃に世話を任せるよう指示する。