裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2020/08/01 14:46 「ブラック・スクリーム」ジェフリー・ディーヴァー

 前作「スティール・キス」でついに婚約したリンカーン・ライムとアメリア・サックス。シリーズ13作「ブラック・スクリーム」は不気味な拉致シーンと、ライムと介護人のトムがハネムーンの行き先について議論するシーンから始まる。 

 殺人未遂の容疑者が海を渡ってナポリで犯行を再開したと聞いたライムは、トムとアメリアを伴ってナポリへ乗り込み、お馴染みの無茶ぶりで事件の真相に迫るのだが、今回もまた、「うわぁ」などんでん返しが用意されている。 

 「チーム・カピターノ・ライム」の一番の目玉は何といってもナポリ森林警備隊のエルコレ・ベネッリ巡査だ。ライムと仕事が出来るのだから有能なのは間違いないが、この青年、人懐っこいことは別として、我々が「ナポリの男性」と聞いてまず想像する(ジローラモさんのような)伊達男ぶりが全くない。真面目で(法的機関の職員だから当たり前だ)純朴で謙虚で、趣味は鳩のレース。最初、彼の思考に時々イザベッラなる女性が登場して「はて、誰だっけ?」と思い「あ、ハトだった」と思い出しては苦笑していた。 

 圧巻だったのは、終盤でテロリストの通話記録を分析するシーンだ。 

 ライムたちは、爆弾テロを阻止するために、傍受した実行犯と首謀者の通話を分析して手掛かりを得ようとするのだが、それを担うのが件の「コンポーザー」。彼が聞き取った微かな背景の音の情報をもとに、ライム以下全員が知力を尽くして場所を特定していく。 

 結構深刻に考えてしまったのは、拉致誘拐犯「コンポーザー」と最後の爆弾テロのシーンの犯人像だ。 

 テロの実行犯の名前はここで明かさないが、その人は特に偏った政治的思想や強い信念をもってテロ行為に及んだわけではなく、犯行の動機は「脅されて仕方なく」というところが重い。これは犯行の経緯は別だが、連続拉致誘拐暴行事件の実行犯である「コンポーザー」ことステファン・マークについても同じことが当てはまる。 

 今話題の「静かなる侵略(サイレント・インベイジョン)」もこうやって進むんだな、とぼんやりと思った。 

 

 最後にライムのお出かけ履歴について。 

定期検診と手術のための入院の記述が数回。 

NY市内の現場へ出向いたのが一度。(「ボーン・コレクター」) 

アメリカ国内の移動が2度。(「エンプティ・チェア」とキャサリン・ダンスシリーズのどれか。) 

カリブへ一度。(「ゴースト・スナイパー」) 

そして本作ではイタリア、ナポリ。 

私の記憶ではこれぐらいしか思いつかない。確かに「究極の安楽椅子探偵そのもの」だが、コロナ禍の外出規制を別にしても、ここ数年遠出らしい遠出をしていない我が身を思い「意外に行動派かもな」とふと思った。