裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2017-05-25 21:54:16.0 3部作しかあり得ない

 P.ルメートルのヴェルーヴェン3部作の最後を飾る「傷だらけのカミーユ」は、なんというか・・・読み終わって複雑な気分だった。伏線の張り方の巧みさやストーリー展開は、さすがルメートル、というクオリティだが、作品は大満足だが主人公に失望した、というのに近い。 

 チームワークが売りのヴェルーヴェン班は、アルマンの死で事実上崩壊してしまったから、では言い訳にならない。強盗障害事件の被害者が自分の恋人だったがゆえに、強引すぎる捜査の様子もいただけないし、事情を知りつつそれを黙認するルイもどうかと思う。このミスの解説では「部下や元上司が温かく支え」と書かれているが、そんなものだろうか?読みながら「あぁ、こんなぶっ壊れたカミーユを見ることになろうとは」と哀しい気持ちでいっぱいになった。 

 これだけヒットした作品なら3作で終わらせず、シリーズ化を望む声も少なくないと思うが、主人公があれだけ破綻してしまった状態では、3部作で正解だと思う。

 

2017-05-17 21:14:47.0 アレックスという女

 P.ルメートル、ルメートル・・・どっかで聞いた名前だな、と思って確かめたらD.ブラウン「天使と悪魔」にあった。ビッグバン理論を世界で初めて提唱者した修道士の名がルメートルだった。 

 さて、「悲しみのイレーヌ」を経て、いよいよ本命の「その女アレックス」である。 

 誘拐事件の被害者の女性は、救出を待たずに自力で脱出した。ところが彼女は警察に何も連絡してこない。追跡中に事故死した誘拐犯の素性を調べていくと、その被害者の女アレックスの驚愕の過去が暴かれていく。犯罪の被害者、あるいは極めて嗜虐性の強い連続殺人犯・・・カミーユたちがたどり着いた真相は・・・絶句、というほかない。 

 被害者、連続殺人犯、そして被害者。アレックスの立ち位置は章ごとに変わる。担当編集者である文藝春秋の永嶋俊一郎氏はこの作品を読んで、東野圭吾の「白夜行」や宮部みゆきの「火車」を連想したと仰っている。確かにミステリーでしか書けない悲しみと感動という点は同感だが、犯行計画が自死で完結する分、アレックスの生きざまは、雪穂や喬子よりはるかに痛ましい。最終章で克明に描かれる、ヴェルーヴェン班による取り調べの過程は圧巻だった。

 

2017-05-08 20:47:47.0 こんな逆転劇もありなのね

 ローマ帝国の衰亡の読み過ぎはとても消耗したし、陽気も良くなって出掛けるのが億劫でなくなったため、久しぶりに図書館に出掛けて書架の間を散策した。

 「熊と踊れ」は下巻しかなかったので、当初の予定通りピエール・ルメートル「悲しみのイレーヌ」を借りた。残虐なシーンとは、あまりお近づきになりたくないはずだが、どういうわけか2年前にピエール・ルメートルが来日した時のインタビュー記事をスクラップしてあった。気にかかっていた証拠だ。

 「読者の確信が揺らぐようなショックを与えたい。波もなくて、読み終えてスムーズにベッドに入ることができる小説が、出来がいいと言えますか?」

  ルメートル氏はこんなことをおっしゃっていたので、そうか、そうですか、では揺るがしていただきましょう、と読み始めたのだが、中盤を過ぎてもちっとも揺らぐ気配がない。どうなるんだ?と思いながら読んでいたら、なるほど大きく揺さぶりをかけられ「え!こういうこと?」と驚愕した。

 

 ただし意外なことが一つ。GW中の昼間に読んでいたので、就寝には全く影響を及ぼさなかった。