裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2020/07/03 07:51 アシガール 最終話 後編

「昨日まで三男だった嫁!」

 忠清の寝顔に見入る唯。目覚めてまず傷の具合を尋ね、唯に「あ、忘れてた」と言われた忠清だが、山中で木の枝でできた唯の頬の傷に心を痛める。自分のために一人山の中を走らせたと詫びる忠清に「目が覚めたら若君はきっと自分を責めるだろうと思った。でも無事でよかった」と唯は笑って答える。

「この忠清の妻になれ」と言われ、「なります!」と唯は元気よく承諾する。

抱き合った二人の顔が近づいたところで、忠高がお呼びだと源三郎が呼びに来たため、忠清は忠高の許へ。

 「唯之助を妻に迎えたい?」忠清の申し出と娘姿の唯に忠高は困惑する。信近が改めて唯之助ではなく、名は唯だと説明し、唯も改めて挨拶するが、家老の千原は、たとえ側室であろうと、百姓の小僧などを、と難色を示す。信近は、唯は自分の後添えの連れ子で天野家の養女だと主張、三男か、いや次女なのかと二人が揉める中、忠清が「側室ではなく、唯を正室として迎えることを許してほしい」と願い出たため、上座の三人は絶句する。

 忠高の猛反対に遭い、唯は落胆するが、忠清は「お前をめとると決めたのはわしだ。何度でもぶつかって、認めてもらう」と唯に約束する。

 「では私は、若君様に相応しい姫となるよう、頑張る。」と」、唯は厳しい花嫁修業に臨むことに。

 

父の謝罪

 怒りの治まらない忠高に信茂は「お怒りはごもっともだが、この機を逃せば、今度はいつ妻を迎える気になるだろうか。となればお世継ぎの誕生も先のことになるだろう。」と忠高をなだめ、「ここからは独り言だが」と前置きして「唯という娘には不思議な力があるような、はるか遠き所から参った守り神ではないかと思える。いっそ守り神をご正室に迎える、というおつもりでお許しになってはどうか。何よりも若君がそれを強くお望みである。ここからは、殿がご自身の目で見極めになられては」と忠清と唯に甘い所を見せる。

 手習いに弱音を吐き、吉乃に叱られながらも「若君に相応しい姫になりたい、殿に認めてもらいたい」と頑張る唯を、物陰から窺う忠高。

 忠高はまた天野家に身を寄せている久と成之も訪ねる。

 母が城下に住むことを許してほしいという成之に「ならぬ」と言う忠高。絶句する成之と身を縮める久に、忠高は「お前の母じゃ、城にて共に暮らせ」と声をかける。また忠高は「毒を盛ったのは自分ではない。後々のことを考え、誰かが忖度してやったことではないかと思うが、全ての責めは自分にある。許せ。」と久と成之に頭を下げる。

 忠清の粘り強い説得の甲斐あって、忠高はついに唯を正室に迎えることを許す。藤尾による唯の奥方修業はさらに厳しいものに。

 

「これからは、わしがお前を守る。」

 如古坊は諸国を巡り、成之の役に立てるようになりたいと旅立っていった。見送る成之の許へ「思いがけず長居をしたが、松丸へ戻る」と阿湖姫が別れの挨拶にやってくる。婚礼もならず、一人御父上の許へ帰るのはつらいだろうという成之に「成之様は意地悪じゃ。」と涙ぐむ阿湖姫。突然現れた唯に阿湖姫は「成之様に、出戻りはさぞ辛かろうと言われ、腹を立てた」と言いつける。成之は「どうせ恥をかくなら次の春まで待ってはどうか。西の丸に大層美しい桜の木があるとか。皆で花見をしませぬか。」と提案する。

 作法の稽古を抜け出したことを吉乃に叱られる唯は「若君のために」と自分に言い聞かせながら、不意に「ご正室とは?」と疑問を抱く。吉乃に「若君様のおそばで、ずっと若君様をお守りする、それがお前の望みだったのだろう?」と言われ、唯は考え込む。

 こっそり忠清の許を訪れた唯は忠清に「奥方になったら勿論奥方の務めに励むが、戦の時には一緒に行くことを許してほしい」と頼みこむ。自分の願いは若君のおそばで若君様をお守りすることだが、その二つのうちどちらか一つを選ばなければいけないのなら「奥方になったら戦はダメだというなら、私は結婚という形にはこだわらない。」涙ながらの唯の嘆願に忠清は「心得た、許す。」と答える。「なればわしは二度と戦のなきよう尽くすのみじゃ。お前を戦場に出すことのないようにの。これからはわしがお前を守る。」忠清は唯にそう約束する。

 「唯之助の脇差じゃ。」三之助は母が携えている物を見たことがあった。持っていた吉乃は「若君様からお預かりしたのです。大切にしまっておくようにと。」

2020/07/01 05:50 アシガール 最終話 前編

「忠清どのが命がけで取り戻しに行かれたおなごであるぞ」

 羽木の本陣で手当てを受ける唯。状況を尋ねる小平太たちに、高山方は大将の成之を狙っていたこと、忠清は無事で、山越えをして小柿城を目指していること、山の向こうに三千の伏兵が隠れていることを知らせる。

 「このままでは高山が全軍でこちらに向かってくる。若君の命も危うい。」と木村。成之は本体はここで敵ににらみを利かせている隙に、自分が忠清を迎えに行くというが、小平太が反発し、本陣は二つに割れてしまう。

 唯は成之と昵懇だった坂口が、罠をしかけた張本人だったこと、対する忠清は、成之と一緒に羽木を守るという思いをずっと抱いていたこと。成之の身を案じる如古坊は、国境の寺で、高山の動きを見張っていたことを訴えて成之を説得するが、意識を失って倒れてしまう。

 手当をするために薬師を呼び、着物を脱がせようとする木村たちを成之は制止する。唯が女であること、忠清は唯を想うがゆえに、彼女の救出に向かったことを知らされ、木村たちは仰天する。

 

「ご寵愛って、超愛してるってこと?」

 忠清を迎えに行くはずの成之だったが、山道で伏兵の待ち伏せに遭遇。絶体絶命の成之を救ったのは、山越えをしてたどり着いた忠清だった。忠清は、無事落ち合えたのは、唯之助が知らせてくれたおかげであること、唯が撃たれたことを成之から知らされる。

 陣幕内で「たわけ、この忠清を謀り、一人で山をくだるとは。」怒る忠清に「でも、上手くいったでしょ」と笑う唯。本陣の木村たちは、先刻の成之の話をようやく真に受けることに。

 目覚めた唯は、吉乃に付き添われ羽木城の奥御殿にいた。既に小柿城に援軍が向かった。間もなく勝敗が付くはずだという吉乃の言葉に自分も小柿へ向かうという唯だが、城の奥女中たちに止められてしまう。

 八百の羽木勢に対し、高山勢は五千。黒羽城からの援軍が来るまで少なくとも2時間、総攻撃を持ちこたえねばと緊迫した空気の軍議の場に、悪丸がやってくる。「唯之助から、敵が大勢やってきたら使うよう言われた。」悪丸は、忠清に「まぼへい君」を渡す。

 

「わしは唯どのに言われたのだ。」

 阿湖姫のところでのんびりと過ごす唯。阿湖姫から忠清たちは援軍到着まで小柿城の防衛に成功したこと、高山の兵が攻めかかろうという時に空から天兵が現れ、羽木勢に力を貸し、「若君はやはり、神仏に守られておわす」ともっぱらの評判だと聞かされ、唯は「まぼへい君」が役立ったことを知る。ただ、高山宗鶴だけが意固地になり兵を引かないために、戦局が長期化しそうな展開に。 

 「和議などもってのほか」と息巻く宗鶴。重臣や宗熊は体調を心配するが、宗鶴は宗熊に「まことの負けとは、命を落とすことではない。己を譲ることじゃ。」父の言葉を胸に刻んだ宗熊は「己を貫き通す」べく、羽木との和議を受け入れると宣言する。

 和議の場にやってきた忠清を見て「ぬしはまことに忠清どのだったのだな」と宗熊。忠清は攻められれば守るために戦うことになるが、今後こちらからは高山を攻めぬことを約束し、宗熊もこれを承知する。

 宗熊に「かの姫はご無事か?」と聞かれた忠清は、本当の名前は唯と言い、今は黒羽城で静養中であることを伝える。唯に、「戦も祝言も人の言いなりになってはならぬ」と言われたことを宗熊が忠清に披露し、和議は成立する。

 忠清の真意が伝わったことは良かったが、忠清と宗熊の女の好みが一緒であることが納得できない様子の成之。