裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2020/08/13 06:10 「アシガールSP」(その2)2020.07.23 NHK総合

「たわけ、それが今生の別れの言葉か」

 何とかして小垣城に入りたい唯は、宗熊の使者として小垣城へ向かう。「若君様!」忠清は駆け寄る唯を抱きとめる。

 唯が宗熊から託されたのは、「今までよう城を守られた」というねぎらいの言葉と降伏勧告だった。

 忠高はじめ羽木家の者が無事黒羽城から脱出できたことを聞いた忠清は、これ以上城を守る意味はないと判断、城の明け渡しに応じることを決意する。

 唯は忠清に、本来黒羽城で今日執り行うはずだった祝言をここで上げたいと願いでる。最初は「先の分からぬ身でお前を妻にすることなどできぬ」と拒んだ忠清だったが、木村にも「四の五の言わず、一生分抱いてお上げなされ」と促され、唯と祝言を上げる。

 明け方近くに目覚めた唯は、忠清にタイムマシンで平成に逃げてほしいと頼むが、全ての責めを負い死ぬつもりの忠清は聞き入れない。唯もまた、どうしても若君を守りたいと逃げることを拒む。忠清はついに「お前が先の世で生きるというなら、わしも生きよう」と約束し、平成へ戻る唯を見送る。

 

「若君の嘘つき、私の大たわけ」

 ひっそりと立つ小さな塔頭の前で、唯は言葉を失った。

 郷土史に詳しい木村教諭の話では、羽木家の惣領九八郎忠清は城を明け渡したのち、一人ですべての責めを負い自刃して果てた。その塔頭はごく最近忠清のものだと判明した彼の墓だと聞かされ、墓石にすがり唯は泣いた。

 5か月が過ぎても立ち直る気配のない唯を家族は心配する。タイムマシンの改良と宇宙線の圧縮には膨大な時間がかかるというのに、覚と美智子は尊に「二人乗り、到着日時は満月の一日前に、時空への影響は最小限に、かつ省エネ設計」と無茶な要求を突きつける。

 失意のどん底にあった唯だが、二人が別れたのは小垣城だったのに、木村教諭に見せられた古文書には忠清はは黒羽城で自刃したとあり、期日も別れの日から半年後だということに気付く。

「別れた後、若君の身に何かあったに違いない。若君を助けるチャンスはまだある!」

 再び戦国時代に戻ると決めた唯は尊にタイムマシンの新調を催促するが、尊は「ムリだ」と悲観的。だが「アンタはここで、未来で命はって仕事しろ」と食い下がる唯の無茶な発言で、尊は両親の要望と送付する今現在の日時を書いた紙を用意し、それを自分で保管することで、未来の自分にバージョンアップしたタイムマシンを開発してもらい、起動スイッチを現在に送ってもらうことを思いつく。

 果たして未来の尊から新型起動スイッチが送られてきた。唯は新しい起動スイッチを使い、戦国時代に戻る。

 

「心得違いも甚だしい、恥を知りなされ!」

 義父となった忠高に挨拶をした唯だが、自分が去った後の忠清の境遇は予想外の辛いものだった。

 唯との約束を守るため、相賀に膝を屈し命乞いをした忠清は、羽木家に害が及ばぬよう事実上の人質として、戦に明け暮れるという屈辱に耐えていた。今では高山も相賀の家来だ、と成之。

「ただ、若君様が生きてさえいてくれたらと」という唯に、吉野は、「惣領のお命とは、ただ生きながらえることではない。その誇りも名も含め、すべてが総領のお命。」と、考えの甘い唯を厳しく叱責する。

 己の無力さに悩む唯だったが、羽木の女たちは意外に元気だった。「思いわずろうても何も始まらぬ。。皆の思いは一つ、羽木を散り散りにしてはならぬと」と久。

 忠高の母の実家、六郷の三ツ木家から羽木の窮状を助けたいと知らせがあり、忠高は六郷へ移ることを提案する。一族郎党のために屈辱に耐える若君を残してはいけないと反対意見で重臣たちが揉める中、唯は「若君を連れ戻します」と宣言する。周囲が呆れる中、「相賀は忠清を気に入ったため、娘婿にすることにした。今日がその祝言の日だ」という知らせが成之からもたらされる。皆に動揺が広がる中、唯は「若君が私たちを裏切るはずがない」と言い切り、皆の励ましに押され忠清奪還のため黒羽城へと走り出す。

「これより六郷を目指す。我らは我らを生きる」忠高は皆を連れ、六郷へ向かうことに。

2020/08/09 06:24 「アシガールSP」(その1)2020.07.23 NHK総合

「若君様、物の怪が。いえ、唯さまが。」

 小垣城に向け戦場を走りながら、唯は叫んだ。

「今日が結婚式だったのに!」

 婚礼を五日後に控えた深夜、忠清は急きょ小垣城へと向かった。後を追った唯は、忠清が高山宗熊から「織田の家臣にそそのかされた父が、和議を反故にして黒羽城へ攻め込もうとしている」と知らせを受けたこと、無益な戦を避けるべく、至急小垣城へ向かわなければならないことを告げる。

 忠清は同行を望む唯に、「知らせが父上の耳に入れば出陣となるはず。その時は兄上と共に父上を止めよ。我らの勝ちとは、ただ生きること。誰も死なせぬ、わしも死なぬ。祝言には必ず戻る。」

そう言い残して小垣へと向かう忠清を唯は見送ったのだった。

 信長の家臣、相賀一成の協力を得て上機嫌の高山宗鶴。羽木を心配する高山宗熊は、自分に総大将を任せてほしいと父に願い出る。

 小垣城到着まであとわずかというところで、忠清は既に城が大軍に包囲されているのを見る。一方唯は、忠高の出陣を制止できず苦慮していた。忠清が無事城へ入ったという知らせと、「己の存念は許婚の唯に託したゆえ、お聞き届けあれ」という忠清からの伝言により、忠高たちはようやく唯の言葉に耳を傾け、出陣は止めることに。

 織田と高山の動きは速く、夜には高山軍が黒羽城下を埋め尽くした。成之に籠城戦をほのめかされ、生き延びる方法を必死に考える唯。そのさなかに老臣天野信茂と千原元次が、せめて一太刀なりとも敵に浴びせると夜討ちを仕掛ける。悪丸をつれ救出に向かった唯だったが、駆けつけた時千原は既に深手を負っていた。

「わしを捨て逃げよ。ぬしは若君様のお子を産む御正室ぞ」唯にそう言い残し、元次は息を引き取る。

 

「ならば知れたこと。お前の思いを果たす者はお前しかおらぬ、励みなされ」

 「一人も死なせない、若君と約束したのに」落ち込む唯に、養母の吉野はタイムマシンの起動スイッチを差し出した。

 忠清は小垣城に向かう前に吉野を訪ね、もしもの時は唯に渡すようにと起動スイッチを託していたのだった。

「許せ、頼む、そう申せばわかるはずと」許せ、はこれを探し出して隠しておいたこと。頼む、はこれを使って自分に逃げろということ。許しはするが、頼みは聞けない。自分にはやるべきことがある。唯はあらためて決意を固める。

 吉野に励まされた唯は、忠高に城からの脱出を進言する。重臣たちは反対するが、忠清が以前から和睦を模索していた野上衆が、羽木家を受け入れる用意があることを知り、忠高は城を出ることを決意する。

 脱出の支度を急ぐ黒羽城に、阿湖姫が戻ってきた。松丸家に戻るようにと成之は説得するが阿湖姫は「成之様について行く」と利かない。「生き延びることができたらその時は」成之はついに将来を口にする。

 忠清が小垣城のわずかな兵で敵を食い止め、時間稼ぎをする一方、唯に命じられた悪丸は「まぼ兵くん」を使って陽動作戦を展開。羽木家は無事城を抜け出すことに成功する。

 単身小垣城へと向かった唯だが、敵陣を突破する途中で「でんでん丸」が故障し、敵に捕まってしまう。本陣で唯を出迎えたのは、城攻めの総大将の高山宗熊と、織田の家臣、相賀一成だった。

2020/08/05 05:59 「カッティング・エッジ」ジェフリー・ディーヴァー

 読み始める前に、登場人物の紹介ページで感無量になる、というのは結構珍しい経験だ。 

 J.ディーヴァー著リンカーン・ライムシリーズ第14作「カッティング・エッジ」の主な登場人物のページに 

”アメリア・サックス・・・ライムの妻 ニューヨーク市警刑事”とあるのを見た時は「おぉ、遂に。長かったー」と読む前からため息が漏れた。 

 面白いことにこの二人、相手の呼び方が一定ではない。「ライム」「サックス」の時もあれば「アメリア」「リンカーン」の時もある。どんな基準で分けているんだろう?今後読み続けていくうちに気付けるだろうか。 

 いきなりラストに近いシーンの話をするが、ライムがマシンガンを肩から下げ、ヘルメットを左手に持った妻の姿を「(緑色のドレスもあでやかだと思ったが)出動服も負けないくらい魅力的だ」と思うくだりがある。確かにお宅の奥さんは元モデルだから当然だけど、こんなのろけ方はねぇ。ライムでなければ「けっ」と思うかもしれない。 

 物語はダイヤモンド専門店で3人の男女が殺されるシーンから始まる。殺されたのは店の主であるディアマンテ―ル(ダイヤモンド加工職人)と顧客のカップル。そして怪我をしつつも、犯人と警察双方から逃げ続ける目撃者。なんなんだ、こいつは? 

 犯行の目的は店主が保管していた高価なダイヤ。犯人像としてはダイヤモンド市場の不条理に憤るイカれた奴かと思っていたら、真相は二転三転し、最後はまたもやあの男に到達する、という物凄い展開。前作のイタリアからホームグラウンドのNYに戻ったライムだが、前作で生じたAIS長官ダリル・マルブリーとの連携が新たな人脈として登場する。二段組400頁超。決してボリュームは軽くないが、テンポが良いのでサクサク読める。読むスキルが落ちる一方の身だが、それでも波に乗ったら4日で読み切った。

 

2020/08/01 14:46 「ブラック・スクリーム」ジェフリー・ディーヴァー

 前作「スティール・キス」でついに婚約したリンカーン・ライムとアメリア・サックス。シリーズ13作「ブラック・スクリーム」は不気味な拉致シーンと、ライムと介護人のトムがハネムーンの行き先について議論するシーンから始まる。 

 殺人未遂の容疑者が海を渡ってナポリで犯行を再開したと聞いたライムは、トムとアメリアを伴ってナポリへ乗り込み、お馴染みの無茶ぶりで事件の真相に迫るのだが、今回もまた、「うわぁ」などんでん返しが用意されている。 

 「チーム・カピターノ・ライム」の一番の目玉は何といってもナポリ森林警備隊のエルコレ・ベネッリ巡査だ。ライムと仕事が出来るのだから有能なのは間違いないが、この青年、人懐っこいことは別として、我々が「ナポリの男性」と聞いてまず想像する(ジローラモさんのような)伊達男ぶりが全くない。真面目で(法的機関の職員だから当たり前だ)純朴で謙虚で、趣味は鳩のレース。最初、彼の思考に時々イザベッラなる女性が登場して「はて、誰だっけ?」と思い「あ、ハトだった」と思い出しては苦笑していた。 

 圧巻だったのは、終盤でテロリストの通話記録を分析するシーンだ。 

 ライムたちは、爆弾テロを阻止するために、傍受した実行犯と首謀者の通話を分析して手掛かりを得ようとするのだが、それを担うのが件の「コンポーザー」。彼が聞き取った微かな背景の音の情報をもとに、ライム以下全員が知力を尽くして場所を特定していく。 

 結構深刻に考えてしまったのは、拉致誘拐犯「コンポーザー」と最後の爆弾テロのシーンの犯人像だ。 

 テロの実行犯の名前はここで明かさないが、その人は特に偏った政治的思想や強い信念をもってテロ行為に及んだわけではなく、犯行の動機は「脅されて仕方なく」というところが重い。これは犯行の経緯は別だが、連続拉致誘拐暴行事件の実行犯である「コンポーザー」ことステファン・マークについても同じことが当てはまる。 

 今話題の「静かなる侵略(サイレント・インベイジョン)」もこうやって進むんだな、とぼんやりと思った。 

 

 最後にライムのお出かけ履歴について。 

定期検診と手術のための入院の記述が数回。 

NY市内の現場へ出向いたのが一度。(「ボーン・コレクター」) 

アメリカ国内の移動が2度。(「エンプティ・チェア」とキャサリン・ダンスシリーズのどれか。) 

カリブへ一度。(「ゴースト・スナイパー」) 

そして本作ではイタリア、ナポリ。 

私の記憶ではこれぐらいしか思いつかない。確かに「究極の安楽椅子探偵そのもの」だが、コロナ禍の外出規制を別にしても、ここ数年遠出らしい遠出をしていない我が身を思い「意外に行動派かもな」とふと思った。