裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2020/12/27 09:05 ♯リモラブ ~普通の恋は邪道~ 最終回2020.12.23 日本テレビ系

 コロナ禍で企業のテレワークが進む中、SNSかきっかけで知り合った二人が、リアルな恋ではジタバタしながら愛を育むラブコメディ。ヒロイン大桜美々は波瑠さん、相手役青林風一は松下洸平さん。

 バーチャル世界で心を通わせるところから始まった二人は、リアル世界ではどこかかみ合わない。まず、お互いの素性が分かるまでに数話かかり、そこからお付き合いらしきものに発展するまでがさらに1,2話、で、いきなり青ちゃんはプロポーズ・・・に失敗し、最終話の終盤で、やっと仲直り。

 あぁ、まだるっこしい。この一言に尽きる。今どきの若者の恋愛事情は、こんな感じなんだろうか?

 以前作家のトム・ロブ・スミスが、プノンペンでカンボジア初の昼メロの脚本を書いていた時を回想し、

「西洋では一話の中で男女が抱き合ってキスまでするのに、カンボジアだと手を握り合うまでに二十話かかる」と表現したが、昭和の女である私は毎週ドラマを見ながら、前述の彼の言葉を思い出していた。

 むしろサイドストーリーの一つである、ハジメちゃんこと朝鳴営業部長とゆりっぺこと富永先生のオトナの恋のもどかしさの方と、最終話の青ちゃんとごもちゃん(風一の同僚、五文字くん。演:間宮祥太朗さん)のやり取りの方がしっくり来た。

 私の中の「若者の恋のイメージ」は今どき「バカップル」にカテゴライズされてしまうらしい。歳とったんだな、としみじみ思った。松下さんを見たい、というそもそものモチベーションのほか、富永先生の含蓄のある箴言と、途中から気になり始めた間宮さんの好演など、色々収穫の多いドラマでした。

 

 

今年の更新はここでおしまい。皆さん、どうもありがとうございました。よいお年をお迎えください。

 

 

                                つい しょうこ

2020/12/11 20:17 「クジラアタマの王様」伊坂幸太郎

 伊坂幸太郎さんは、千里眼か名品の水晶玉でもお持ちなのだろうか。 

実際に伊坂幸太郎著「クジラアタマの王様」を読めば、私が言いたいことがお分かりいただけるはずだ。 

 お菓子メーカー勤務の男と、代議士と、アイドルグループのメンバーの青年。実生活で何の接点もなさそうな3人は、過去のある事件と偶然がきっかけで巡り合うことになった。各々の自覚症状(?)に差はあるものの、実は彼らは夢の中で、ファミコンやオンラインのRPGのキャラクターのように、助け合って怪物と戦っているのだ、という。 

 やがて彼らの夢の中での戦況は、どうやら目覚めている間の彼らの実生活にも影響を及ぼしていることが明らかになり、時には密に、時に疎遠でありながらも影ながら、彼らは仲間の誰かが危機に陥ると一致団結して敵に立ち向かう。 

 夢の世界での彼らの敵が、巨大な熊とか寅とかそのキメラみたいな怪物である一方、彼らの実生活でのそれは、お菓子メーカーが受けるクレーム攻撃やSNS上での炎上とか、サーカスから逃げ出した猛獣とか、新型ウイルスのパンデミックだ。 

 特に最後のパンデミックに至っては、新型コロナの第3波に見舞われているさなかで読んでいるから、その臨場感に圧倒される。本作の刊行は20197月。執筆は実際のコロナ禍より前で、伊坂さんはその世界を完全に創作として書いているはず。にもかかわらず、そこに生じる群集心理と言うか、集団ヒステリーみたいな現象の描写の一つ一つが正確、的確なことに驚いた。

 

2020/12/06 06:34 「ミステリー・クロック」貴志祐介

 嵐の大野智くんと、戸田恵梨香さん、そして小説には出てこないが、佐藤浩市さんというキャスティングで好評だったTVドラマ「鍵のかかった部屋」だが、原作の方はシリーズ第3段「ミステリー・クロックともなると、結構読んでいてしんどい。 

 しんどいのは多分私が歳をとったせいなのだと思うが、密室殺人のトリックの難解さとテクノロジーの進歩がなんというか、「やり過ぎ」の領域に達してしまっていた。 

 視覚トリックを利用した迷路、いくつもの時計の特性を利用したアリバイ工作、そして推進数百メートル下での復讐劇。テクニカルタームが多すぎて、その記述を読んでいるうちに消耗してしまった。 

 犯行の手口だけではない。「密室といえばレスキュー(法律事務所)の青砥先生」という評判が法曹界で完全に定着してしまった青砥純子が、密室トリックの解明は相方の榎本に任せておけばいいものを、変な仮説を次から次へと繰り出すものだから、「青砥先生、一応弁護士なのに何でこうもおバカなのよ」と無駄に疲れてしまう。 

 先日、読売新聞に本作の文庫版が刊行の広告があった。「ミステリー・クロック」は2冊に分けて発売されるらしい。確かにあれをそのまま文庫化したら、ボリュームがありすぎて手に余ってしまうだろう。妥当な判断だと思う。

 

2020/12/01 06:38 「クリスマスを探偵と」伊坂幸太郎

 12月になりました。 

 会社のワークシェアリング体制で、なんと一か月全休していたリアルついしょうこは、引き続き今月も全休という、リーマンショック以来の「究極のお茶引いてます状態」となりました。 

 ただ、リーマンショックの時より所得補償が充実している点では、今回の方が救われているな、と感じています。 

 

 ハードカバーのあ行の書架で、サイズがイレギュラーで並んだ本から一冊だけ飛び出していて目を引いたのが伊坂幸太郎文、マヌエーレ・フィオール絵「クリスマスを探偵と」。伊坂ワールドは殺し屋や泥棒が、真面目なのかふざけているのかわからない台詞を吐きながら仕事(?)に精を出すシュールな世界。当然クリスマスの探偵さんも、ほっこりするような展開は望めないだろうな、と思っていたら、これが意外にも探偵カールは対象を尾行し行き先を突き止め、そこで張り込みするだけという地味な展開。 

 館に入っていった対象が出てくるまでの間、カールは近くの公園で時間を潰すことにするが、そこにはベンチに座って本を読む若い男がいた。 

「こんな寒い中、外で読書とは、何かの訓練か」というカールに 

「寒さと暗さでもうお手上げでした」と苦笑するする男。クリスマスの宵のひと時、二人は取り留めのないおしゃべりを始めるのだが、時節柄サンタクロースのことに話が及んだのをきっかけに、カールは子供の頃のクリスマスの思い出を語りだす。今回の依頼人と、今尾行している対象と、そして自分。プレゼントのこと、両親の不和。家を飛び出したこと。クリスマスのまつわる苦い記憶がカールの胸に蘇ってくる。 

 最初はただの聞き役だった男は、途中からなにやら合いの手が積極的になり始め、しまいには「にわかカウンセラー」のようになって、一見こじつけとしか思えない変な仮説を展開し始める。やがて館から出てきた対象は、なんとサンタクロースの扮装をしていた。 

「もっと家の近くで着替えればいいだろうに」とカール。 

「ですね」と男。 

やがて男の連れがやってきたことで、カールは彼を見送る。 

 伊坂さんだからシュールな減らず口が次々と飛び出すんだろうな、という予想を裏切って、ラストは中々ハートウォーミングな結末だった。