裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2020/07/22 06:25 「メゾン・ド・ポリス3 退職刑事とテロリスト」加藤実秋

シリーズ第3弾。シリーズ初の長編である。 

 ところでヒロインのひよりはこれまで1冊に一回必ず危機的状況下で、夏目と「やるのか?」「やります。」と修羅場を乗り切ってきたのだが、今回は爆弾を積んだ車を、被害を最小限にとどめることが出来そうな埠頭まで運転して移動して自分は海に飛び込む。 

 おぉ、ついにひよりがカーアクションまでこなすようになった、感無量である。 

 前作は藤堂さんの元妻杉岡さんが登場したが、今回は昭和のデカを体現したようなおっさん、迫田さんの家族が登場する。迫田さんは定年退職時に熟年離婚してメゾン・ド・ポリスの住人となったものの、今でもメゾンには別れた奥様から季節の折々に好物のお漬物などが届けられており、改善の余地のない絶縁状態ではない、という状態であることが第1作で披露されていたが、今回迫田さんは事件の聞き込みに出向いた場所で息子保仁くんと再会する。しかもその後の展開で保仁くんにも疑いの目が向けられ、迫田さんは息子を疑いつつ事件の真相に迫っていく。 

 先ほどのひよりのカーアクションがクライマックスかと思いきや、そのあとに迫田さんの元妻、葉子さんが語る離婚の真相が驚きだった。私にはこっちの方がクライマックスのように思えた。

 

2020/07/18 21:13 「燃えない親父」2020.07.11フジテレビ系「世にも奇妙な物語」より

 ホラーは苦手なので、松下洸平さんが「世にも奇妙な物語2020夏編」に出演すると知り、うぇぇと悩みながら視聴した。

 結果的に出演作品「燃えない親父」は、「怖い、気持ち悪いホラー」ではなく、「世にも奇妙な物語」ではマイナーだが、決して廃れない「ハートフルな奇妙なお話」だったのでホッとした。ディスクにダビングしてしまったくらい、ホッとした。

 

 陶芸職人松田徹が亡くなった。心不全による突然死だった。葬儀の間も仕事が頭を離れない姉の春香を苦々しく思っている弟の光一。ぎくしゃくする松田家の控室に、斎場の職員鬼瓦が「お父様が燃えません!」と血相を変えて飛び込んでくる。

「何か故人様に心残りがあるのではないでしょうか」という鬼瓦のアドバイスを受けて、松田家の面々は「父の心残り」を推測し対処するものの、どうしても徹の遺体は燃えない。繰り返す火葬のたびに棺の代金がかさみ、皆が焦る中、ついに我慢の限界にきた春香は斎場を出ていこうとする。その背中に光一が「親父の心残りって姉ちゃんのことじゃないの?」と言い放ったのをきっかけに、松田家の親子4人の秘密が明らかになる。

 姉弟のわだかまりも解け今度こそ、と挑んだものの、やはり徹の亡骸は燃えない。「親父の心残り」ってなんなんだ?春香は鬼瓦のネームプレートを見て、15年前の母の葬儀の時のことを思い出し、「ひょっとして」と控室を飛び出していく。

 

 葬儀の場面でのコメディーというのは、ドラマの中の人物の焦りがエスカレートするにしたがって、見ている方も不謹慎な笑いのツボにハマっていく。

 気のせいか役名、陶芸工房の二代目という設定ともに、脚本家の「絶対この役は松下さんにやってもらうんだ」という気合を感じてしまう松田光一は、家族思いの好青年だ。ところが「父が火葬しても燃えない」という異常事態に「親父、窯の温度にはうるさかったからね」とシュールな一言を漏らしたり、「あの店にミンミンちゃんなんていないよ」とフィリピンパブに詳しかったりと、チャラいところも持ち合わせている。祖母が「徹を連れて帰る。幽霊だろうがなんだろうが、わしの可愛い息子じゃ」と騒ぎだしたときには「悪霊だったらどうすんだよ、責任もって最後まで可愛がれんのか」と妙な論理で祖母をなだめる。この「チャラいところとシリアスなところ」の両面、しかもそれが微妙にズレているところを表現する、という難しい要求に応えられる俳優というところで、松下さんが起用された気がする。

2020/07/14 06:05 「MIU404」第二話2020.07.03TBS系

  先日F.V.シーラッハの「刑罰」を読み終わった後、7/3(金)放映の「MIU404」第二話で松下洸平さんが演じていた殺人事件の容疑者、加々見崇を思い出していた。

 ドラマと小説がどう絡むのかというと、「刑罰」の終りで、語り手である弁護士の「私」が自分の依頼人たちのことを思い出すくだりがある。

「彼ら、彼女ら(依頼人)の孤独感と疎外感、そして自分自身について愕然としていたことを」

 この一節を読んだとき、小説の中の彼の依頼人たちと、あの加々見崇という男の心境を思った。

 加々見は殺人事件の容疑者で、犯行現場から逃走し、ある夫婦の車をカージャックする。カージャックされた夫婦はどういうわけか「自分は殺していない」という加々見の言い分を何の根拠も無いのに全面的に信じ、突然加々見に協力的になる。この3人の何とも奇妙な逃避行が捜査陣を翻弄する。 

 彼はなぜ逃走したのか、どこに向かっているのか?聞き込みで明らかになる加々見の同僚と彼の独白から「ひょっとして加々見君は犯人ではない?」という仮説が浮上するなか、追うMIU(機動捜査隊)404の二人は事件の真相と、彼の目的地にたどり着くのだが、そこに至るまでがなんともスリリングだった。

 

 なぜ今頃そんな中途半端なラグタイムを経たTV番組の感想を書くかなー、と思われるだろうが、大した理由はない。ただ松下洸平さんのことを何でもいいから書きたかった、ってことである。

 

追伸:F.V.シーラッハの「刑罰」については後日、きちんとした投稿をする予定です。

 

 

2020/07/11 06:04 「メゾン・ド・ポリス2 退職刑事とエリート警視」加藤実秋

 「メゾン・ド・ポリス」シリーズ第二弾。

 

 第1弾の印象が「これ以上ドラマ化に相応しい作品はないと思うほど、演出のやりがいがある余白の多さ」だっただけに、本作次第で今後も読み続けるか否かが決まるなと思っていた。結果は・・・「あぁ、やっと物語が始まった」。 

 本作でようやく(?)藤堂の別れた二番目の妻で、現役の鑑識課の捜査官である杉岡沙耶さんや、あろうことかドラマでは故人という設定になっていたが、こちらでは失踪中のひよりの父尚人が登場する。思うにこの第2作を第1作にして「なんなんだ、この集団は?」と思わせておき、第1弾は別の機会にエピソード1のように発表しても面白かったんじゃないか、と思ったりした。 

 驚いたのは、ドラマでは会社の不正を糾弾しようとしていた尚人は、事故とも自殺とも区別がつかない死に方で既に故人となっていたが、小説では失踪中となっていて、実は潜伏中も妻とは時々連絡を取り合っていた、ということになっていて「え、それありなのか?」と一瞬引いてしまった。 

 ところで、サブタイトルの「エリート警視」間宮朝人だが、ラストで「青森の五所川原中央署へ異動」という消息が披露されるが、それってどうなんだろう? 

 そんな辞令もらったら、普通の警察庁キャリア官僚は即退社して直ぐに民間企業に再就職する。敢えて陸奥路へ旅立つようなキャリアとなると、「変人」の誉れ高い竜崎紳也(元警視庁大森署署長・隠蔽捜査)ぐらいだろう。

 

2020/07/08 06:04 「メゾン・ド・ポリス 退職刑事のシェアハウス」加藤実秋

 「ひよっこ」こと新任刑事の牧野ひよりと、退職警察官専門のシェアハウス「メゾン・ド・ポリス」の住人が事件解決に奮闘するシリーズの第一弾。昨年1月、TBS系でドラマ化された高畑充希主演「メゾン・ド・ポリス」の原作である。これが何というか・・・こういうのは初体験だった。

 小説をドラマ化するとき、145分に収めるためとか、台詞で説明しきれない人間関係と登場人物を整理する必要があるとか、大抵の場合中身を削る作業が欠かせない。逆にドラマのノベライズ化は、台本を文章にする時に必ず何らかのボリュームアップが必要となる。

 勿論、ドラマ化にあたって原作にはないキャラクターを新たに加えることはよくあるが、全体としては圧縮する作業が主体だと思う。ところがこの「メゾン・ド・ポリス 退職刑事のシェアハウス」、原作よりもドラマの方がボリュームアップしているような印象を受ける。少なくとも削ったエピソードとドラマ化のために追加したエピソード、プラスマイナスゼロに近いと思う。ドラマ化向きの小説、あるいは最初からドラマ化を意識して(あるいは期待、または内定状態?)書かれている小説なのか?という印象を持った。