裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2020/06/29 05:41 アシガール 第11話 後編

「笑うて悪かった」

 悪丸の寝相の悪さに閉口した唯が外へ出ると、忠清も庭に出てきていた。

 改めて助けに来てくれたお礼と、自分のために面倒なことになってしまったことを侘び、阿湖姫が無事と聞き喜ぶ唯。忠清は阿湖姫が「お前を助けるのはわししかおらぬ。お前を想うわししか。」と、自分を送り出してくれたと告げる。

「っしゃ!」

 意を決した唯に、長沢城で明日死ぬかもしれない、明日宗熊と結婚させられるかもしれないと思った時「こんなことなら、もっと早く腹を決めていればよかった」と告白された忠清は「まるで敵陣に切り込む勢いじゃの」とからかうが、唯と抱き合っているところへ、山狩りが始まったと如古坊が知らせてくる。寺にいた若い僧が知らせに走ったようだという和尚の言葉に、一行は如古坊を道案内に先を急ぐことに。

 

「ご武運を。若君様と唯之助をよろしくお願い申し上げます。」

 出陣の前に会いに来た成之に、久は会おうとしなかった。「母はわしが若君のために出陣することに不満のようだ」という成之に「お怒りならば、お会いになってあなたを叱咤なされるのでは」と答える吉乃。成之を見送った吉乃に久は、自分に会えば、成之が迷うのではと心配だったと気持ちを明かす。阿湖姫の代わりに捕らわれた唯之助が吉乃の子と知った久は、吉乃に頭を下げる。

 

「もっといいことを思いついた・・・ごめんなさい。」

 お互いを信用できずにいがみ合う唯と如古坊。如古坊は成之に、高山とは手を切り忠清と向き合ってみてはと助言したが、そのせいで成之に始末されそうになったこと、自分は黒羽城下ではお尋ね者だから、国境のあの山寺で、成之のために高山の動きを監視していたと話す。

 如古坊に呼ばれて視界の開けたところにやってきた忠清たちは、眼下に羽木勢と高山勢が布陣しているのを見る。しかも高山勢は、羽木勢の死角となる山のふもとに、三千の伏兵を忍ばせていた。

 「無用な戦を避けるために自分が高山に投降する」と忠清。唯は自分が最短距離で山を下り、敵陣を抜けて羽木勢に知らせるというが忠清は一蹴する。忠清に食い下がる唯は、悪丸にでんでん丸で忠清を気絶させ、如古坊と悪丸に忠清を託して自分は羽木陣営を目指すことに。

 小柿の羽木陣営では小平太と成之の間に不協和音が鳴り響いていた。間者からの知らせで、忠清が既に長沢城を出たこと、山中に入ったことをつかんだ成之たちは、高山の軍勢は忠清を高山の領内から逃さぬためのものだと察知する。そこへ「高山側から使者が来た。」と知らせが入る。

 

「兄上さん、来ちゃダメ!」

 山を下り高山の兵に紛れ込んで、最前線で羽木陣営に向かう隙を伺っていた唯は、以前成之のところで見かけた武将の坂口が「大将が参るなら話をしても良い、兵を引こうと使いを出した。姿を現した成之を鉄砲で仕留めれば、羽木は終わりだ」と話しているのを耳にする。両軍の間の川の対岸に成之たちの姿を確認した唯は、坂口を突き飛ばし、成之に危険を知らせるため、羽木勢に向かって走る。

 後ろから味方に狙撃されながらこちらへ走って来る高山の足軽をいぶかしんだ成之と小平太が、それが唯之助と分かった瞬間、唯は高山勢に撃たれてしまう。

2020/06/27 19:20 アシガール 第11話 前編

「幸せになっていただきたかったのです。」

 長沢城内の煙は、やはり尊の作った「金の煙玉」を使った忠清の仕業だった。尊の作ったゴーグルをつけた忠清は、唯をおぶって奥御殿を脱出。門番を難なく説き伏せて、悪丸共々城からの脱出に成功する。

 黒羽城内では、成之が仏間で気分が悪くなった阿湖姫を部屋まで送り届けていた。「このところ仏間にこもりきりのようだが、先日忠清が朝早く城を出たのを見かけたのと関わりがあるのか、よもや高山領へ向かったというのではあるまい。」と尋ねる成之に阿湖姫は「私と兄で送り出した。忠清さまは必ず唯之助を救い出すと。覚悟を決めて送り出したつもりだったものの不安だ。」阿湖姫の言葉に成之は仰天する。「成之様は高山に手づるがおありのはず、どうか二人を助けるために力を貸してほしい」と頭を下げる阿湖姫は「私に頭を下げるくらいなら、なぜ忠清を止めなかった」と成之に詰め寄られ、

「幸せになっていただきたかったのです。忠清様が想われる方と共に。」

と泣きながら心の内を吐露し、頭を下げる。成之は思わず「こやつも阿呆じゃ。」と漏らす。

 忠清が唯之助を助けに単身長沢城へ向かった、あちらでは松丸義次を名乗っているようだと聞き、激怒する忠高。小平太は忠清救出のため、今すぐ出陣したいと願い出るが、成之は「うかつに攻め入れば、忠清の正体を明かすことになる。まずは小柿城で様子をうかがうべき」と反論。緊張が走る二人の様子に忠高は「二人で行け」と下知を下す。

 

「唯之助とは、何者じゃ」

 追手をかわすには山越えをするしかない。救いに来たものの、難儀をさせると詫びる忠清に「全然、オッケーっす」とかつらを外し、険しい山道を進む唯。

 信近の寝所にやってきた「じい」こと信茂は「奇妙でならぬ。一国の惣領が足軽ごときに命を賭けるとは、尋常ではない。唯之助とは何者じゃ。」と訝る。

 

「実のところ、大将の一番の仕事はやせ我慢じゃ。」

 羽木にいる高山の間者から高山宗鶴の許に、「自分たちが拉致した娘は阿湖姫ではなく偽物だった。また先日松丸義次を名乗ってやって来たのは羽木家の嫡男、九八郎忠清だった」と知らせが届いていた。目の前に居ながらみすみす忠清を逃したと激怒した宗鶴は、大規模な山狩りを指示する。

 丸二日水だけで空腹な唯は、目の前のキノコを食べようとして初対面の時のように忠清に止められる。「若君だって食べていないのは一緒なのに、いつもと全く変わらない」という唯に忠清は「まず、徒歩で戦う雑兵の腹から満たせ。大将は食らわずとも笑っておれ」と幼い時から父に繰り返し言われてきたと答える。

 先を行く悪丸が小さな山寺を見つけ、3人はそこでお粥をふるまってもらう。先を急ぐという忠清に和尚は、夜の山道は熊が出るなど危険だと止めるが、偶然そこへ身を寄せていた如古坊に身元を明かされてしまう。如古坊は、和尚に迷惑がかかるから早々に発てと忠清に警告するが、和尚は「我が主は御仏のみ。ゆえに難儀する者をただお助けするのみ。」と3人を泊める。

2020/06/25 05:58 「心のなかの冷たい何か」若竹七海

 一度読んだことがある本なら、中身は大抵覚えている。忘れている場合でも、読み進むうちに「あ、読んだことあるな」と思い至ることがほとんどだ。 

 残念ながら、若竹七海「心のなかの冷たい何か」は読んだことがあるはずなのに、あらすじがさっぱり思い出せない。読み直してもまだ思い出せない。 

 文体とか作風が好みでなければまだ納得できるのだが、かなり好きな作家の作品を読んだ記憶がない、というのは滅多にない。情けない限りである。 

 その「心のなかの冷たい何か」は、失業中の私こと若竹七海が旅先で知り合った女性と約束を交わしたが、相手が自殺を図り、植物状態になっているという。知らせを聞いて間もなく彼女から何ともおぞましい「手記」なるものが届き、七海は彼女の自殺の真相を求めて常習的毒殺愛好者の存在に迫っていく。

 

 本が刊行されたのは1991年。思えばこれまでの人生で一番怖いもん無しだったのが、あの時代だった。 

 私個人だけでなく日本が、社会全体がそうだったと思う。そんなバブル経済の真っただ中の世相や時代の空気を懐かしく思いつつ、サイコパスとかシリアルキラーなんてあくまでもフィクション、しかも日本以外の国の作品、と相場が決まっていた。まさかあの浮かれた時代にあっさり終りが来るとか、日本が舞台のクライムノベルとか、ノワールとか犯罪小説というジャンルがこれほど爛熟する日が来ようとは、そしてついにフィクションではなく、事件が現実のものになる日が来るとは夢にも思わなかった。

 

2020/06/21 06:08 「不穏な眠り」若竹七海

 62日のこと。 

 再開した妙高図書館にひと月半ぶりに出掛けて行ったら、遠目に入り口がブロックされているのが見えた。 

「え、ウソでしょ。まだ閉館中?」と動揺しつつエントランスに到着したら、接触機会軽減のため正面の手動の扉だけが使用禁止になっていた。「出入りは左側の自動ドアを使用されたし」ということで自動ドアを二枚通過して入館する。入館した後は貸出カウンターの手前で手指の消毒、おでこで職員の方の検温を受けて、来館者カードに指名を記入する。 

 掲示されている「お願い」など見なくても、「まったりと長居しないでくださいね。」という空気が全館に満ちているので、速足で館内を回る。 

まず雑誌コーナーで「クロワッサン」の「着物の時間」のコーナーをチェック。 

今野敏「清明」なし。 

若竹七海ハードカバー、めぼしいものはなし。 

加藤実秋文庫本「メゾン・ド・ポリス」あった。 

若竹七海文庫本「不穏な眠り」あった。ついでだが「心の中の冷たい何か」の内容を忘れちゃったから、もう一度読もう。 

 というわけで葉村晶シリーズの最新作(といっても刊行されて早や半年だが)「不穏な眠り」。 

 ある時は恐ろしく粘り気のある池にはまり、またある時は大みそかのビルの警備で凍死しかかる。(しかもこのエピソードが後に怪談話に脚色され都市伝説化して再度登場するところが笑える。)今回もハムラは相変わらず「割のいい仕事のはずが、ふたを開けたらとんでもないことになった」的な案件とエキセントリックな依頼人に振り回されるが、今回の目玉は何といっても表題作「不穏な眠り」の「聞き込みの最中に相手に絞殺されかかる」だ。 

 首を絞められた被害者が凶器を外そうともがいて、自分の首を引っ掻いて作る傷。ミステリではお馴染みの「縊死を自殺か他殺かを見定める」ための法医学用語「吉川線」を自ら作ってしまったハムラの、 

「実物を見るのは初めてだ。できれば自撮りしてMURDER BEAR BOOKSHOP』の」SNSにアップしたかった 

には爆笑してしまった。

 

2020/06/18 05:33 アシガール 第10話 後編

「何というか、私は唯が好きなのです。」

 松丸義次の話では、昨夜遅く高山から知らせが来て、阿湖姫の身柄は現在、長沢城で預かっている。息子宗熊と婚儀を執り行いたいと言ってきた。至急妹の安否を確かめる必要があり、父が自分を遣わしたという義次。

足軽を嫁にするとは、と宗鶴を嘲笑う忠高だが、忠清は気が気ではない。

 唯の救出を禁じられた忠清だが、秘かに義次と阿湖姫をたずね、婚儀の件を承知したこと、ついては姫の無事を確かめるためにも、兄の松丸義次を遣わすと返事を書いてほしい、唯の救出のために力を借りたいと頼み込む。

 命を助けられたというだけでなく自分は唯が好きだから、もう一度若君様に会わせてやりたい。「私のことは、お気遣いなく。」忠清の気持ちを知った阿湖姫は、彼を手助けすることに。

 

唯、脱出に失敗

 脱出の機会をうかがう唯の許へ、宗熊が菓子を持ってやってくる。今は見張りが交代する時刻で、手薄なのでやって来られた、という宗熊。今がチャンスと外へ出ようとする唯に、宗熊は「わしも行く」と言い出す。行き先を問われて「黒羽城に戻る」と答えた途端、宗熊と言い争いになり警固の者を呼ばれ、唯は「くま」こと宗熊が高山宗熊だと知る。

 宗鶴の前に引き出され、自分が高山の本城、長沢城に連れてこられたと知った唯は、宗鶴から「姫は間もなく宗熊と祝言を上げるのだ」と聞かされ仰天する。激昂し宗熊を打ち据える宗鶴の剣幕に怯える唯。今度は立派な座敷ではなく、鍵のある座敷牢に閉じ込められる。

 

母はすべてお見通しなのだ

 吉乃の許へ、暫く国境の見回りのために城を留守にする、兄上の母上をよろしく頼むと挨拶に来た忠清。「よもや唯之助を助けるために独りで事を起こそうとしているのでは?」と尋ねられ「そのようなことは微塵も考えておらぬ」と言い切った忠清だったが、翌朝早く一人で城を抜け出そうとすると、庭先に悪丸が控えていた。おふくろ様に言われてここで待っていた、これをお渡しするようにと。差し出したのは秘密兵器が入った唯のリュックだった。受け取って出掛けようとする忠清を引き留めた悪丸はさらに、決して若君様のおそばを離れるなと吉乃に言われたと、同行を申し出る。

 

「戦も婚礼も、人の言いなりになってちゃダメだよ」

 閉じ込められてひもじい唯の許へ、宗熊が煎り豆を持ってやってくる。粗暴な父との関係に息苦しさを感じる宗熊に「戦も婚礼も人の言いなりになってちゃダメだよ」とアドバイスする唯。自分を励ましてくれる唯の言葉に心を動かされた様子の宗熊は「阿湖姫との祝言がまこと楽しみじゃ」と婚礼に前向きになり、唯は墓穴を掘ってしまう。

 

松丸義次の正体

 松丸家からの使者が到着したと宗鶴に呼ばれ、これでいよいよ偽物であることが露見すると悩む唯。「久しぶりじゃのう、妹よ。」聞きなれた声に顔を上げるとそこにいたのは忠清だった。

 急なことだが、今夜祝言を済ませてしまいたいという宗鶴の提案に同意する忠清。唯は事の成り行きに慌てるが、「ではまた後ほど、阿湖」という忠清に思わず見とれてしまう。

 婚礼の支度を頑強に拒む唯。その時、火の気もないのに、辺りは視界が利かないほどの煙が充満し、奥御殿は大混乱に。煙の正体に心当たりがある唯。「まさか若君、あれを使ったの?