裄は短しタスキは長し

数種類のテーマを軸にその時の気分で書きます

2013/09/23 22:13 新潮クレストブックスは効率が良い

 新潮クレストブックスの作品は、できるだけ目を通すようにしている。

一番印象が強かったのはイーユン・リー「千年の祈り」。この1冊をきっかけに、アンソロジー「記憶に残っていること」(上越図書館所蔵)に出会い、沢山の佳作に巡り合えた。各国の文学賞受賞作、欧米の現代作家の代表作、話題作がそろっているので、なんというか効率が良いのである。品揃えが自分好みで、気に入った品が手に入りやすい行きつけの店のような、と言ったらわかってもらえるだろうか。

 結局好みではなかったな、と思ったのは今のところベルンハルト・シュリンクの作品(作品に登場する男性がとにかくめんどくさい)とアリス・マンローの「林檎の木の下で」(連作短編集と呼ぶには壮大すぎる)ぐらいだ。

 一番最近はジュリアン・バーンズの「終わりの感覚」があった。著者にも作品にも記憶に引っかかるものはなかったが、新潮クレストブックスで、2011年ブッカー賞受賞、土屋政雄訳、「多崎つくる・・・」の予約の順番待ちに程よい厚さ、という有難さである。 

 巧妙に伏線を張り巡らせた緻密な構成で、バーンズは主題である若さと老い、愛と性、記憶と回想、生と死(ことに自殺)について真面目に語っている。多分60代になった時にもう一度読み返したら、内容のあまりの痛さに絶叫するかもしれない。

 ただ妙高図書館の蔵書には少々難点があって、裏表紙の総括やコメントの一部が管理用バーコードで隠れてしまって、読めないことが多い。装丁のレイアウト上、裏表紙にあらすじがある場合、出来ればかぶらない場所にバーコードを貼ってほしいものである。

2013/09/19 20:15 朝までに間に合いそうなら空を見て

 仲秋の満月をよく見ようと、眼鏡をかけて自分の部屋の東向きの窓から空を眺めると、不思議なことに月が二つ浮かんでいる。

 私は近視からくる乱視のため、眼鏡なしで見る月は雲がなくても常に朧月だが、大きいのと小さいの、全く違う姿の二つの月が見える、というのはどうにも不思議だ。

 まさか、1Q84でもあるまいし、何かの見間違いだろうとよく見たら、窓のペアガラスに月が映っていた。わかってみればなんてことはないが、それでもあまりに幻想的で、つい見とれてしまった。これが緑色だったら本当に1Q84の世界だが、こちらは黄色い。ここではない、別の世界に入り込んだつもりで、ちょっと浮かれてみたい気分である。

さっそく画像に残そうと携帯を構えたが、ガラス越しでは二つを同時にうまく撮れない。残念ながらブログに掲載できなかった。だからお宅の窓がペアガラスの方はぜひ、間に合えばこれから朝まで、間に合わなければいつか満月の夜に確かめていただきたい。

 

2013/09/16 20:39 最近の、テレビにまつわるワタシのお気に入りと妄想

 1:イプシロン、宇宙へ

このニュースは見た、というより何かをしながら小耳にはさんだ、という状況だったので、「イプシロン」という単語に反応して頭に浮かんだ情景は、ヂヂリウムに満たされた棺のようなカプセルの中に横たわり、宇宙空間を漂うキリコとフィアナの姿だった。

だから「イプシロンが無事宇宙に飛び立った」と聞いて、あぁよかった、と思いながらも「おいおい、今更二人のジャマしに行くか?」と下らない考えが頭に浮かんだ。

「ああ、あれ」と思った貴方、私は貴方と同年代です。「何それ、意味わかんない」と思った方、興味があったら「装甲騎兵ボトムズ」で検索してみてください。

 

2:土曜日の「斎藤さん」

勿論ドラマも好きだが、お気に入りの理由はもう一つ。スポンサーが日本生命なので、「生きるチカラ」のCMを確実に見ることができること。20代から50代の岡田准一が顔を合わせて人生を語る、あのCMである。

 第1弾「しっかりしないと」編はそれほどでもなかったが、第2弾「結婚編」にはハマった。そして第3弾「同期の女子が入院」編。「今じゃ俺の上司」のオチはお見事、である。

 

2013/09/12 20:32 ⅤはⅣより更に見劣りする・・・BS-TBS「江戸を斬る」

 やはり、女目明しのお京、というキャラクターの設定は、失敗だと思う。いや、キャラクターは悪くないがキャスティングが良くない。初代ジュディ・オングさんに続き、シリーズⅤでは山口いづみさんが演じているが、今見るとああいう美人女優さんがあの役、というのはなんだかな~という気持ちでいっぱいになる。

 山口いづみさんは「江戸を斬る」シリーズⅠとⅡでは金四郎への恋ゆえに親に背き、自分の意思を貫くために最後には出家する老中の娘、由美を演じておられた。最初は勝気でワガママなお嬢様だったが、ラスト近くでは金四郎とお雪のために献身的に行動していて、とても切ない役どころだった。

 思うに山口いづみさんは、「男まさりで勝気な気性の別嬪さん」の役が一番絵になる女優さんだ。だからたとえ男まさりでも決して男みたいな身なりをしていてはいけない。

 一番有名なのは「水戸黄門」の助さんの奥様、しのさん。綺麗なうえに剣の腕もなかなか。妻の立場で助さんにガツンと言う時もあるが、実はベタ惚れのしのさんが私はとても好きだった。ただ山口さんは、武家の女性の姿ほど町人姿がきまらないので、旅の一行に加わるのは分が悪かったように思う。そのかわり、初回と最終回で武家の妻である、本来の姿のしのさんは、本当に素敵だった。

 ただし。

 しのさんは一番有名だが、私のイチオシ、ではない。

 山口さんが演じる「勝気な別嬪さん」役で、一番好きなのは「漁火おこん」である。番組は「大江戸捜査網」。おこんは、松平定信の直属の隠密同心、つまり一種の潜入捜査官みたいな役で、表向きは芸者さんとして、主にお座敷で情報収集を行う、という役どころだった。「勝気な別嬪さん」に艶やかさが加わるのだから、もう無敵の美しさだった。

「大江戸捜査網」でもラストは殺陣のシーンがある。レギュラーは時々入れ変わったが、四人の隠密同心は、二人は女性で、そのうち一人は必ず花柳界の女性、という構成で成り立っている。だから、山口さん演じる漁火おこんも、ラストでは殺陣に参加し、出の衣装姿で刀を振るうシーンがある。「大江戸捜査網」のラストは、力強さでは鬼平に負けるかもしれないが、女性が参加するぶん華麗さがあった。今でも再放送しないかな、と思うのだが、なぜかお目にかかることができない。倫理規定に引っかかってしまうのだろうか。

 

2013/09/07 22:35 読んだら涼しくなるかと思ったのに

 7月から8月にかけての2カ月で3冊。情けない限りだが、チョ・ヒョンジェの魅力は自己嫌悪をはるかに凌駕した。ようやく、狂気の時期を過ぎ、彼に関することはおおむね望ましい形の定番になりつつある。

 マーセル・セローの「極北」は、訳者である村上春樹さんが絶賛していたので、見つけた時は嬉々として書架から取り出した。なるほど、ずしっ、とくる読み応えである。英語圏での発表は2009年だが、日本で今紹介されたということはなにやら天啓めいている。ただ、一番読んでほしい人ではあるけれど、福島にゆかりの深い方は、手に取るときは覚悟を決めてからの方がいい。廃墟やゴーストタウンの描写はひょっとしたら痛いかもしれない。

 村上氏は本作を著者のお父様ポール・セラー氏から紹介された、とのこと。あとがきによればセラー一族は才能に恵まれた方ばかりだ。父のポールは高名な旅行作家、弟ルイはテレビ・ジャーナリスト、叔父アレクサンダーも高名な作家で、従兄弟のジャスティンは脚本も手がける有名な若手俳優だとのこと。マーセルはこの一族の中では「何か持ってるように思うけど、ちょっと影が薄い」存在だったのかもしれない。

 ただ、私はあとがきを文字通りあとがきとして読んだので、メイクピースが旅する極北の世界に完全に圧倒された。だから、あとがきの「影が薄い」云々については正直、えぇ?どこが?だってこれ、凄いじゃん、と思った。

ずしっとくる、読むと痛い、それでいて切ない。そしてそれでいて小説の世界が自分を圧倒していく感覚を敢えて表現するなら快感、というのが最も正直な感想。わからないですよね、だから読んでみてください。すいません。

 それにしても「多崎つくる・・・」とか「終わりの感覚」とか、最近読んで痛い作品ばかり選んでいる気がする。