太極拳は攻防格闘技である。
掤・・全部こちらから攻撃しない。必ず相手が何かして、それに応じて動く。相手の力を利用するので、相手と同じ力を出す必要がない。
心在先身在後・・まず動かそうという心(意識)が先に動き、体はその後ついてくる。何も考えないでただ動いてはいけない。必ず心が働いていることがわかるようにする。例えば起勢から攬雀尾に入る時、ただ体を左へ、それから右へと回すのではなく、(おもてから動作が見えなくても)心を左へ右へとめぐらすようにする。
動則還視静則注視・・動いている時は主となる手を見る。動作が止まる時は一点を見る。左右搂膝拗歩の曲げ戻しでは、一瞬早く前を見る。つまり相手を確認してから攻撃をするということ。
雲手では絶対手を見てはいけない。必ず遠くを見る。按の動作で引き込む時は左右の手に気を配る。左顧右眄。
無過不及(不足)・・動作はやりすぎてもいけないし、不足してもいけない。例えば重心を前足にかけすぎたり、どっちの足にかかっているかわからないようではいけない。
開胯圓擋・・股関節を開き、股の部分が丸くなるようにする。腰を入れ、股関節が一直線に前方を向く状態は緊張してかたくなるので、してはいけない。(伸ばしている足の)膝が入ってしまうので、つま先と膝の方向も合わず、前から押された場合抵抗できない。股関節は斜めに向け、かかとからの力(勁)が途中でとぎれないようにする。
腰を入れていると勁が腰でストップしてしまい、力が伝わらない。前からの力に弱い。
股を丸くしておくと力がスムーズに伝わる。押されても弾力があり、抵抗できる。
太極拳ではかかとを根と考え、これが動くのを嫌う。力はかかとから出てくるので、これが動いては力が出ないのである。楊式でかかとをけり出さず、つま先を入れ込むのはそのためである。また、つま先を入れ込むのは相手の足を動かし、根をなくさせるためである。
組んで練習する時は自分のつま先をかかとを軸にして外にずらし出し、相手の足を動かす。
かかとがしっかり地面についているのと、ついていないのとではどうなるか。
つま先が浮いてしまうとどうなるのか。
足だけで動かそうとするとどうなるか。
かかと、膝、腰がつながっていると考える。
つま先が浮くと膝が弱くなる。
練習なので、相手(動かされる方)はあまり重心をかけてふんばらないこと。
歩行練習ではこれらのことを頭に置き、相手がいると考えながら歩く。手はリラックスできるよう背中に当てたりするが、高い位置にすると肘が曲がり、肩が上がって緊張するので、低い位置に当てること。
太極拳は日常の動作とも関連がある。例えば歩く時・・
目は遠くを見る。遠くを見ようとすれば顎が上がったり、頭が傾いて下を向いたりということはしない。顎はやや引き、視点を定め、頭はまっすぐにする。
背筋を伸ばし、肩に力を入れない。速く歩くには手を振るが、肩に力を入れて振ってはいけない。歩く時に体が上下するのは、上体が緊張しているからである。上下するということは背骨が上から下へ押されるということで、長い間には悪影響が出てくる。歩く時はリラックスして、体が水平に移動するようにする。
足は、後ろ足の指の付け根で地面を蹴る。その力で体が前へ進んでいくようにする。
歩く速度を上げようと思うなら、歩幅を狭くして数で稼ぐようなピッチの速い歩き方ではなく、大またで踏み出し、ゆったりと、しかもすばやく歩くよう心がける。大またに踏み出すのは、太極拳もそうだから、いい練習になる。
1998 周佩芳先生楊式講習会にて